ITの発達した現代において、ネットさえつながっていればどこでも仕事ができるにもかかわらず、それでもあえてコストを払って物理的なワークプレイスを維持し、会社という場で仕事をするのはなぜか。言うまでもなく、コミュニケーションのためである。人と人とのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションから、創造的な成果が生まれる、そのためのオフィスなのである。
それは、書店にもいえることである。
書店という物理的スペースは、単に本を売るだけの場であるか。電子書籍化の果てに、書店は必要なくなるのか。
否、である。ビジネスのIT化がそれでもオフィスを必要とするように、読書界がIT化しても、書店はやはり必要なのである。なぜならば、書店もまた人と人の出会う場所、人と人が出会い創造的な何かが生まれる場所であるからである。
そのことを、書店はもっと声高に主張すべきではないのか。
一介の読書ファンとして、私は今、猛烈にじれったさを感じているのである。書店は何をやっておるんだ、何をうろたえておるのだ、と。みずからのコアコンピタンスを磨かずしてどうするか、と。
物理的な本を販売する場である書店は、同時に、人と人との出会いの場を提供してきた。
本を取ろうとして書棚に手を伸ばしたら、脇から伸びてきた手と触れ合って、
「あっ」「あっ」
「どうぞどうぞ」
「いや、どうぞ」
「えっ、でも」
「いや、あの」
「‥‥(ポッ)」
「‥‥(ポッ)」
そこから芽生える恋‥‥。
書店では、このような出会いが、日々繰り返されてきた。そんな出会いを求めて、幾多の人々が書店を訪れている、といっても過言ではないのである。文系カップルの5組に1組(推計)が、出会いのきっかけは書店であるといわれているのである(総務省調べ)。
しかしながら、そのあたりについて、書店はこれまで本腰を入れて取り組んでこなかった.
並んでいる本同士が有機的につながっているような書棚が、
「魅力的な棚」
といわれ、それをつくる書店員が「名人」などと呼ばれ賞賛されたりすることがあったが、その一方で、人と人が出会いやすい書棚は評価されてこなかった。
本の充実度や書店員のサービス等によって書店がランク付けされることはあっても、そこでどのくらいの出会いがあるかによって書店が評価されることはなかった。
利用者はもっぱら口コミによって、
「あの書店は出会いが多いらしい」
「友達の今の彼は、あの本屋で見つけんだって」
などと書店を選んできた。
出会いを求めて訪れるお客さんに対して、書店からの情報発信はほぼ皆無であったし、一切のサポートをしてこなかった。
だが今、電子書籍化の波が押し寄せてこようとしている今、あらためて書店は、自らのよって立つところを見つめ直さねばならぬのではないか。
単に本を売る、というだけの業態にいつまでも固執していては、今後、電子書籍化が進行する中で、ジリ貧に陥るのは誰の目にも明らかである。であるならば、人と人との出会いの場としての方向へ、軸足を移していくべきではないだろうか。それこそがまっとうな経営的判断というものではないのか。
では、そのために、書店は今、何をすべきか。
早急に取り組むべきこととして、以下のようなことを提案したい。
ひとつは、基礎的なリサーチの実施である。
本の売上や販売部数についての数値的データは蓄積されてきたが、出会いについては、1日に何度出会いがあったか、といった基礎的な数字すらない体たらくである。まずは、実際に書店がどれだけ出会いの場になっているのかを、キッチリとデータとして提示すべきであろう。
・各書店で発生した出会いを日単位で算出
・その出会いの結果、実際にカップルになる割合
・書店内のどこで出会いが発生しているか、また時間帯はいつか
・出会いを発生させたお客さんの年齢、職業等
・出会い発生のきっかけとなった書籍は何か
その他、出会いに関する項目について、精査すべきである。
また、こうした調査を行うことは、
「書店は、本の販売の場から軸足を移し、本気で出会いの場になる!」
ということの公式の宣言ともなる。低迷している書店業界に、世間の耳目が再び集まることであろう。
そして、調査が行われたら、その結果を有効に活用せねばならない。
出会いの多い書店には、どのような理由があるのか、どのような棚づくりをしているのか、立地やインテリアに工夫があるのかなど、徹底的に研究、検証すべきである。さらに、そうして得たものを、一書店内、一チェーン内で秘匿することなく、他の書店にもどんどん広げ、応用し、出会いの場としての書店の力を全国的にベースアップしなくてはならない。
一方で、大々的なPRも必要であろう。書店はもう、単に本を買うだけの場所ではない、人と人との出会いの場、お客さんの出会いをサポートする空間なのです! ということを、世間に知らしめねばなるまい。
そのための手段としては、低迷しているとはいえ、まだまだ雑誌の力は侮れない。「anan」をはじめとする女性誌で、
「恋は書店で生まれる!」
といった特集を組んでもらい、まずは若い女性に対して訴求したい。そこで話題になれば、おのずと男性誌やテレビにも波及していくであろう。
とにかく、事態は一刻を争う。
電子書籍化の完了が先か、出会いの場への転換が先か、書店の未来がその一事に懸かっているのだと、書店人には肝に銘じてもらいたい。
うかうかしていると、いずれiPhoneなどで、
「同時刻に同じ本を買った人と手が触れ合っちゃうアプリ」
などができてしまうかもしれず、そうなってから慌てても、もう遅いのである。
※ちなみに、物理的な書店のもうひとつの強みとして、
「本屋さんにいるとなぜかウンチに行きたくなる」
ということから、
「お通じをよくするためのスペース」
としての業態転換も、業界の一部では検討されていると囁かれていますが、個人的には、どうせ変革するのであれば、お通じのための場であるよりも、人と人との出会いの場として、本屋さんには生き残ってほしいと思っています。本屋さん、がんばって!
2010年06月26日
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しかしながら、もしそうした出会いが注目されるようになれば、当然のことながらそうした女性にいかにアプローチするかのハウツー本なんかも出てきて、本屋は出会いの場というよりは、一種の戦場となるような気がして仕方がありません(笑)。
立ち読みしている女性にいかにしてアタックするかという男性と、そんな男性をあしらいつつ、自身の理想とする男性を待つ女性との壮絶な心理戦――そんな本屋はイヤだなあ・・・。
「同時刻に同じ本を買った人と手が触れ合っちゃうアプリとか出来たら面白いなー」
と思ってしまいました。
このサイトに来て、確実に清太郎さんに毒されてます。
清太郎さんのせいで、こんないけない思考回路にっ!
本屋は戦場!
いいフレーズですね(^^)
本屋さんに行くだけで、なんだか緊張です。入り口からお客さんが入ってくるたびに、ビシッと視線が集中して‥‥、って、そんな本屋さん、イヤですね‥‥。
黄黒さん。
思ったのなら、ぜひつくってみてください!
ちなみに、次のネタはそっち系の予定。電子書籍ネタは、考えるといろいろおもしろいです。まったく生産的ではないけど。
書店そのものが、迷宮でありデートスポットなのではないでしょうか。
ここは、強気に出て、入場料を取りましょう。
出会いの場としてのビジネスモデルが確立すれば、実際、入場料は視野に入ってくるでしょう。本を買うこともできるけど、でも本は出会いのための手段でしかないのです。
‥‥となると、ホントの本好きは、もう本屋さん来ないかも。