「どれだけ売れたか、だけではなく、話題性やインパクトの大きさ、将来性、私の個人的趣味といった各要素を勘案したうえで」
の順位付けです。
一昨年、昨年に比べると、なんだかパッとしませんが‥‥。
| 読書界番付 | ||
| 東 | 西 | |
| 1Q84 | 横綱 | 電子書籍 |
| ブランドムック | 大関 | 太宰治 |
| ONE PIECE | 関脇 | 大日本印刷 |
| リーマン本 | 小結 | 貧困本 |
| 戦国本 | 前頭1 | オバマ本 |
| 加藤周一 | 同2 | 高遠ブックフェスティバル |
以下、解説です。
■横綱
1Q84
電子書籍
今年の新刊で社会的にも話題になったベストセラーって、『1Q84』しかないんじゃないでしょうか。1月にエルサレム賞で注目を集めた後、久々の長編でさらに話題をかっさらい‥‥、と2009年は村上春樹一人勝ちでした。
ノーベル文学賞にも、もしかして‥‥、と(ファンと出版社が)期待しましたが、そちらは残念でした。(ハルキ読者じゃないからよくわかんないけど、村上春樹ってそんなにノーベル賞に近いの? 欧米でもよく読まれているのはわかってるけど、今ここで読む意義とか、そういう選考委員会好みの政治性を考えると微妙だし‥‥。)
一方の電子書籍は、まあこれといって何か大きな話題があったわけではありませんが、あだ花で終わった「コルシカ」のサービス(購入した雑誌をウェブでも読める)とか、iPhoneアプリとして読める雑誌(クーリエジャポン)とか、同じくiPhoneで雑誌を有料配信するMagastore(どれだけ使われてるのかしら)とか、ディスカヴァー・トゥエンティワンの「デジタルブックストア」とか、国会図書館の蔵書デジタル化とか、Kindleが日本でも発売とか(青空文庫なら読める)、amazon.comの1日の売上でKindle向けが紙の本を上回ったとか、そうしたもろもろを合算して横綱に。ついでに今後の期待も込めて。
日本雑誌協会が来月から「雑誌のデジタル配信に向けた実証実験」を開始するというし、なんとなく電子書籍化への「風が吹いてきた」ような気がしますが、どうなることやら。まあ一般の新刊書籍が専用端末やケータイで少し安く読めるようになるまでブレイクスルーはないでしょうけど‥‥。
■大関
ブランドムック
太宰治
ChuChuやらマリ・クレールやら、今年もメジャータイトルが休刊になった女性誌界ですが、そこそこ元気だったのが宝島社でした。sweetやInRedなんかで付録をつけるだけでなく、一冊丸ごと1ブランドで付録のついた「ブランドムック」が完売続出とか何とか、ニュースになりました。
でも、いつでも女の子が大好きな、そんな「安くてかわいい」路線もいいですが、それに対抗して、
「オリジナルバッグ付き・丸ごとヴィトンムック」(10万円)
なんていうのがひとつくらい出てくれると楽しいと思います。
今年はまた、太宰治、松本清張、大岡昇平、埴谷雄高、中島敦と、今年は何人ものメジャー作家の生誕百年でもありました。1年終わって、勝者は太宰、2位が松本清張、でした。
ただ、太宰治フィギュアが商品化されなかったのが、残念です。
■関脇
ONE PIECE
大日本印刷
朝日新聞の12月4日付け朝刊で、9面をジャックした「ONE PIECE」。このところ元気のないコミック市場にあって、大きな話題になりました。第56巻の初版発行部数は285万部と史上最高を記録したそうです。「メンズノンノ」の表紙にもなったし。
映画も好調で、「宇宙戦艦ヤマトを初日に見に行ったら、すごい行列で、ヤバイ!と思ったんだけど、ヤマトのほうはガラ空きで、並んでたのはONE PIECEだった」なのだそうです。
業界では大日本印刷の動きが目立ちました。昨年、図書館流通センターと丸善を子会社化してましたが、今年は3月にジュンク堂を子会社化、5月には主婦の友社の筆頭株主になって、さらにブックオフへの出資を決定、9月には傘下のジュンク堂が文教堂の筆頭株主に。
今年はそれほど大きな出版社の倒産がありませんでしたが、代わりに着々と業界再編が進んでいるのかもしれません。ただし、こうして提携や経営統合した先のビジョンというのが、まだハッキリしないのだけど。近所のブックオフも、あいかわらず元のままのブックオフだし‥‥。
■小結
リーマン本
貧困本
リーマン本といっても、もちろん数学のリーマン予想ではなく、「ぼく、オタリーマン」とかそっちのリーマンでもなく、昨秋のリーマンショックのほう。さあいよいよ世界恐慌か、いや日本は大丈夫かも、とリーマンショックと恐慌関連のビジネス本、経済本が一時期、本屋さんの店頭を彩りました。
このリーマンショックと関連して、湯浅誠や雨宮処凛らの「反貧困」ものをはじめ、昨年に続いて貧困をテーマとした本もいろいろ出ました。今年は、貧困の現状告発本が一巡して、政権交代と相俟って、貧困を克服するためにはどうすればいいのか? といったようなテーマの広がりが見られました(ベーシックインカムの議論など)。
ところで、この貧困ブームの端緒になったのは、一昨年の赤木智弘「『丸山真男』をひっぱたきたい――31歳フリーター。希望は、戦争。」でしたが、思えば雑誌発で社会にインパクトを与えたのって、このときが最後だった気がします。寂しい。
■前頭一枚目
戦国本
オバマ本
大河ドラマの直江兼続が女性に人気だったことに加え、「戦国BASARA」などのゲームから広がった「歴女」が市民権を得て、これまで主に中高年男性向けだった歴史本が、少し華やいだものになりました。印象的だったのは、「“戦国BASARA”武将巡礼」シリーズや「戦国武将ぴあ」、「戦国武将お墓参り手帖」のようなガイドブック的な本です。
次は「竜馬伝」と「坂の上の雲」ですから、来年は幕末〜明治をテーマに同様の書籍(幕末志士巡礼、幕末ぴあ、幕末志士お墓参り手帖)が出そうです。
でもって、幕末ぴあに対抗して、「幕末Walker」「るるぶ幕末」「幕末一週間」などが出ると、楽しそうです。
また、年の初めには、演説集をはじめとするオバマ本も流行しました。政権交代で民主党本もいろいろと出ましたが、ベストセラーになる前にみんな政権に幻滅しちゃったみたい‥‥。
■前頭二枚目
高遠ブックフェスティバル
加藤周一
夏の終わりに、鉄道の駅もない山間の小さな町で、「ブックツーリズム」のイベントが開かれました。それが今年から始まった「高遠ブックフェスティバル」です。都心の一箱古本市とか、こういうのをきっかけに、草の根の読書ムーブメント、本との出会いを演出するイベントがどんどん開かれるようになるといいなあ。
加藤周一は昨年の12月に死んだ評論家・医者。没後、「やっぱり加藤周一はすごかったなあ」ということで、著作集やら何やらが刊行されました。
今年はレヴィ=ストロースが死んで、やっぱり著作が少しずつ出ていますが、むしろ庄野潤三の小説をどんどん文庫化してほしかった。
ということで、以上でおしまい。
一昨年の番付は前頭6枚目まで、昨年は同3枚目までの番付をつくりましたが、なんだか年を追うごとに番付が寂しくなっていきます。
しょんぼり番付の候補はいっぱいあるんですが、なんだか余計悲しくなりそうなので、今年の読書界しょんぼり番付は無しです。(単に、メンドーだから、でもあるけど。)
ちなみに、しょんぼり番付候補は、いっぱいある休刊雑誌や2兆円を割った出版市場はもちろんですが、大関か関脇には、ぜひ埴谷雄高を推したいところです。せっかくの生誕百年で、マンガ版「死霊」とか、「死霊完結編」とか(「死霊」は未完です)が出るのを期待したけど、埴谷雄高のことが少しも話題になりませんでした。
さて、明後日からはいよいよ、
「国民読書年」
が始まります。
1年後、この「国民読書年」が、「読書界しょんぼり番付」に顔を出さないといいのですが‥‥。



ぽつぽつと送られてくる友人お勧めの本とか、専門誌に友人が書いたから買ってくれというお誘いで、購入するのが関の山…僕が本を読まなくなっているということは、僕と同世代の友人たちもおそらく本読みを億劫になっているに違いありません。
歴女は確実に増えています。見向きもされなかった左馬光春に萌えられたり大塩中斎が渋めのおじさんになったり、女性たちを意識したIFものが僕の周りでは話題になりました。
IFがやたらに出回るときっと本当の歴史もこんがらがってわからなくなるんだろうなと危惧しております。
旧年はお世話になりました。後半戦は失速で更新もまばら、こうして他のサイトにくることも少なかったですが、今年は精力的にネットライフも楽しみたいと思いますので、よろしくお願い致します。
今年もよろしくお願いします。
いわゆる若者の本離れよりも、実際には中高年の本離れが問題になってるんですよね。国民読書年ですし、少しでも読んでいきましょう(^^)
歴史ものは、歴女のおかげもあって、一昔前よりずいぶん垢抜けたイメージになりました。まあ本当の歴史がわけわからなくなろうと、読者が増えるのはいいことかな‥‥と思っています。
樽井さん。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
樽井さんは身体にじゅうぶん気をつけてくださいね。