2007年11月21日

脱げばよかった?

今月30日に出る柳美里の新刊「柳美里不幸全記録」(新潮社)の表紙が、著者本人のフルヌード、なのだそう。撮影は篠山紀信。
メディアへの露出が多いとはいえ、必ずしも見られることが商売ではない職種のうえ、なおかつ39歳という年齢だというのに、ドーンとハダカ! というその自信に脱帽というか辟易というか、そのあたりの評価は分かれるだろうけど、それはそうと、もしかしたらこれをきっかけに、
「そうか! 脱げばいいのか!」
とばかりに、いろんな作家が雪崩をうって脱ぎ始め、単行本の表紙がぜんぶ著者のヌード写真ばかり(しかも、あまり美しくない)になってしまったら、どうしよう。
が、ちょっと待て。脱げばいい、ってもんなのか。ここはまず冷静になって、ヌードになることのメリットとデメリットを、過去の作家を例にして考えてみたい。

たとえば島崎藤村であれば、詩集「若菜集」なんかで女学生にキャーキャーいわれてた頃に、
「藤村悪行全記録」
などと銘打って赤裸々な告白本をフルヌードの表紙付き(ただし箱入り)で出していれば、全国の女学生がキャーキャーいって真っ赤になってギュッと目をつむりながら買っただろうから、それなりに儲かって、極貧の挙げ句の栄養失調で3人の子どもを失うことはなかったかもしれない。しかし、おかげで極限の私小説作家として大成することはなく、日本文学史上にチラリと輝く「脱ぐ詩人」で終わってしまうことになったかもしれない。

太宰治が、「走れメロス」(主人公が走りながら全裸になってしまう話だ)を、みずからのヌード(しかも走ってるシーン)を表紙にして刊行していたら、当時31歳で、まあそれなりに見せられる体であったろうし(太宰治のおなかが出ていたとは思いたくない)、やっぱり女学生がキャーキャーいいながら買ったであろう。全裸をさらすっていうのはちょっとデカダンな感じだから、坂口安吾も「白痴」あたりで、壇一雄も「火宅の人」で、真似したかもしれない(ただし「火宅の人」で全裸だと、「お風呂に入ってたら家が火事になったので、とりあえずそのまま飛び出してきました」という内容の小説だと誤解された可能性もある)。
しかし、全裸で走行などという、なんだか開放的で、ある意味とても健康的な(よくわかんないけどエコだし)ことをしたおかげで気持ちの整理がついた太宰は、自殺することなく天寿を全うし、そのぶんインパクトが薄れて、若い世代に支持されるような作家ではなくなっちゃったかもしれない。

ストーキング作家の近松秋江が「黒髪」などを、脈絡もなく自身のヌード写真を表紙として刊行していたら、
「いや、あなた、それはストーキングじゃなくてストリーキングでしょ」
ということになり、秋江は日本文学史上に輝くストーキング作家ではなく、単なる変態露出作家として記憶されることに(あるいは忘れ去られることに)なったかもしれない。

というようなことを考えると、ほーらね、やっぱり、必ずしも脱げばいいというものではないらしいよ。少なくとも、この先長く生きて大成しようというつもりだったら、とりあえずは脱がないほうがいいかもしれない。
posted by 清太郎 at 09:21| Comment(4) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とりあえず三島は脱いでますよね。
(全裸前向きとかじゃないと思うけど)きゃあきゃあいいながら写真集買った私♪

脱いでほしい作家。。。んんん〜。。。。
いない。。。
やはり秘すればこそ花〜。
Posted by シキ at 2007年11月21日 23:16
シキさん。
三島由紀夫のポートレートって、パンツ(ふんどし?)いっちょか、軍服か、どちらかしかイメージできないです。脱がなければ、海外での評価ももっと低かったように思うし(とくに海外のゲイの人から)、脱いだことで記憶にも記録にも残る作家になれたという成功例のように思います。
林真理子とか、えーと、ほかに思い浮かばないけど、一般的に作家の場合、ヌードになったからって、正直いって、あんまり関係ないような気もします。
しかし、島田雅彦なんて、いかにもハダカを表紙にしたエッセイ集とかありそうだけど、そういうわけではないんですね。
Posted by 清太郎 at 2007年11月22日 00:28
島田雅彦は女装ポートレートが(着物姿だった)
扉(?)についてる本がありましたが。
あと本人が表紙のもあった。(服は着てました〜)
まー正直、女装はまあ、女装だねえというものだし
ごにょごにょ。。。
ハンサム!かっこいい!大好き!ですが、脱いで!
とまでは思わないところです〜。
Posted by シキ at 2007年11月23日 09:30
シキさん。
そのあたりは微妙なファン心理なのですねえ(^^;
いわれてみれば、島田雅彦の場合、あの露悪趣味というか悪戯好きの性格が、単に「ハダカになる」ではおさまらないのでしょうね。
それにしても、女装はたしかに微妙‥‥。
Posted by 清太郎 at 2007年11月24日 11:09
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