2007年11月07日

実はゲイでした

「ハリー・ポッター」のダンブルドアが「実はゲイでした」というのが先日作者によって明らかにされたわけですが、まあ考えてみれば、ダンブルドアがゲイであろうとストレート(というのかしら? 政治的にあまり正しくない言葉のような気がするけど)であろうと、話の大筋にはあまり関係がありませんよね。もちろん、ファンの中には、先日の発表以来、
「ダンブルドアのことが、もう、気になっちゃって、気になっちゃって、僕、どうしたら‥‥」
という人もいるでしょうが、たとえば「実はロンがゲイでした」なんてことに比べれば、微々たるものです(注・ハリポタは1巻しか読んでないので、このあたり憶測でてきとうなこと言ってます)。
それに、同じ老魔法使いでも、これが「指輪物語」のガンダルフが「実はゲイでした」ってことだったら(by 未森さん)、えっ、えっ、そそそそうだったの!? ってことは、旅の仲間とかいいながら、じじじ実は、下心ありあり!? もしかして、フロド狙い? と、読者はおそらくかなり動揺してしまうことでしょう。

ってことで、例の通り、「実はゲイでした」という裏設定が明らかになったらイヤだなあ、という作品をちょっと考えてみました。


川端康成「雪国」
主人公の島村は、実はゲイでした。
国境の長いトンネルを抜けて雪国に行って、芸者の駒子との関係を深めていたかに見える島村が実はゲイとなると、駒子との関係は男女の仲ではなさそうですね。これまでずっと押し隠してきた、なのに旅先で、ふとしたはずみにもらしてしまった、自分がゲイであるという事実。だが、相手の芸者・駒子は、気味悪がることもなく、無視することもなく、親身になって自分の告白を聞いてくれた。子ども時代からのつらい思いや、今あこがれている男性のこと、愛のない結婚生活のことなどについて、訥々と語る島村と聞き手の駒子の間には、何かしら連帯感のような厚い友情が育っていったのだった‥‥。
そして、クライマックス。目の前で燃え上がる炎。2階から落ちながらも一命を取り留めた葉子(駒子の妹です)。命のはかなさ、あやうさを悟った島村は、心に固く誓うのだった。一回限りの生、このまま真実を隠したまま生きていくのはやめよう、東京へ帰ったら、カミングアウトしよう‥‥。さあと音を立てて天の河が流れ落ちるように、その思いは島村の体と心を突き抜けたのだった。
‥‥って、なんだかこれはこれで、ありのような気もするんだけど、いや、こんなの「雪国」じゃないから。

ジェーン・オースティン「高慢と偏見」
ダーシーとビングリーが、どちらも実はゲイでした。
ヒロインのリジーと結ばれる、高慢だけど本当は心やさしいダーシー、リジーの姉ジェーン(「無垢で世間知らずでほわーんとしていて、見た感じちょっとオツムのほうがトロそうで、それでいてカラダのほうはけっこうムチムチでボインボインだったりして、見ていてハラハラしちゃうのだけど、実はわりとしっかり者で面倒見がよい保母さんタイプの年上のお姉さん」キャラです)と結ばれる爽やか青年ビングリー。いつも一緒で親友どうしに見えるふたりが実はゲイってことは、当然、実は付き合ってるってこと!? つまり、リジーおよびジェーンとの結婚は、カモフラ婚!? そちらの方面には疎いベネット姉妹は、体よく利用されてるだけ!? ダーシーとビングリー、非道すぎ! 鬼畜!

井伏鱒二「山椒魚」
岩屋に閉じ込められた山椒魚は、実はゲイでした。
ということになると、同じ岩屋に蛙を閉じ込めてしまったことが、なんだか途端にエッチっぽく見えてくるんですけど。そのまま2年経っちゃったりして、その間、何があったんですか!? 蛙も最後には「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ。」とか何とか言っちゃったりなんかして、それって、つまり、最初は無理矢理でイヤだとか言っておきながら実は案外キライじゃないかも的展開!? そんなベタな小説だったんですか、これは?

佐野洋子「100万回生きたねこ」
100万回生きた猫は、実はゲイでした。
100万回生き、100万回死んで、最後に白猫と幸せな家族をつくって本当の愛を知ったかに思えたあの猫が、実は最後までゲイであることをカミングアウトできない哀れな猫だった、ってことですか! 白猫との結婚は、やっぱりカモフラ婚!? 不幸な結婚生活だったけど、建前を押し通したの? あるいは、よそでゲイの恋人猫と浮気をしていて、絵本の中では発表できない不倫だったけど真実の愛をそこで見出し、それで幸せになれたってこと? 100万回生きた挙句、最後がそれでいいんかい! っていうか、白猫の立場は!? 

椋鳩十「大造じいさんとガン」
大造じいさんは、実はゲイでした。
時代が時代だけに、カミングアウトもままならず、真実の愛を得ることもなく老いを迎えた大造じいさん。今は悩み多き街なかを離れ、ひとり里山で暮らしている。
そんな大造じいさんがあるとき出会ったのが、ガンの残雪であった。鳥であるとはいえ、群を率いるリーダーとしての風格、立派な風貌、毅然とした態度、しなやかな羽のはばたき、艶やかな羽毛に、いつしか大造じいさんは、男として、男を愛する男として、ある特別な感情を抱くようになっていたのだった‥‥、ということですか! 怪我を負った残雪を庇護したのも、そういうヨコシマな理由からだったんですか! やだー、エッチー。もう、大造じいさん、ゲンメツー。

うーん、こうしていろいろ考えてみると、やっぱり小説のキャラが「実はゲイでした」っていうのは、軽はずみにカミングアウトすべきではないかもしれません‥‥。


posted by 清太郎 at 08:33| Comment(7) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「指輪物語」時代(今回の映画化前という意味で)は、
腐女子なカップリングというのがどの程度あったのかは判りかねますが、
そりゃもう「LotR」の2次創作は、百花繚乱。
想像するのが難しいようなカップリングまで何でもアリです。

原作者も天国で笑ろてはることでしょう。
や、クリスチャンやから怒ってはるかな?

しかし…基本的にアタリマエと思っている設定を覆して妄想するとおもろいもんですなぁ。
Posted by 未森 at 2007年11月07日 13:01
100万回生きた猫で吹いたwww
しかも大造じいさんとガンを持ってくるセンスに脱帽w
Posted by hg at 2007年11月07日 16:35
以前見たサイト「ほめ子のやおい童話」を彷彿とさせるキャラのいじりっぷりにグッときました。
「モチモチの木」のじいちゃんがゲイだったら、たまったもんじゃないですよね(笑)
Posted by 海亀 at 2007年11月07日 16:43
通りすがりで失礼します。
ガンダルフがゲイかどうかは謎(笑)ですが、ガンダルフ役のイアン・マッケラン氏はゲイですよ。
Posted by なるを at 2007年11月07日 19:09
未森さん。
ふふふ、ネタのヒント、ありがとうございました。
「ロード・オブ・ザ・リング」は、たしかに、「どうぞどうぞ、つくってください」的ネタ満載のキャスティングですもんね。たしかに「百花繚乱」っぽい。トールキンは‥‥、どうなんだろ、英国人だから、そちらの方面がけっこう好きなのか、あるいは断固反対か。いずれにせよ、まあこうして著者が死んでずいぶんになるのにこれだけもてはやされるのだから、幸せな作品です。ハリポタはどうなるのかしら。

hgさん。
おほめいただきありがとうございます。当たり前のものとして享受している作品の「実は‥‥」をさぐるのは、なかなか楽しいものです(すごくくだらないけど)。

海亀さん。
「ほめ子のやおい童話」って初めて知りましたが‥‥、早速検索して、悶絶しました。
「モチモチの木」もねえ、‥‥自粛しましょう。

なるをさん。
そ、そうだったのですか。となると、やっぱりフロド狙いだったんでしょうか。あるいはサウロン?
Posted by 清太郎 at 2007年11月07日 21:14
『高慢と偏見』はかなりそう思いながら楽しくよみました。(てへ)
『指輪物語』はもーーー!!あれやこれやタイヘンです(^^)

『山椒魚』が読みたくなりました。。。
そっかあ。
Posted by シキ at 2007年11月08日 21:35
す、すでに、そうでしたか(^^; いや、たしかに、タイヘンでしょう。いやだわ。
「山椒魚」は、ぜひ、最後の3ページだけでも、どうぞ。なんか、もう、蛙ツンデレ。
Posted by 清太郎 at 2007年11月08日 22:54
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