近年、こうした「改装モノ」はあちこちで流行ってまして、倉庫や工場や教会をオフィスに改装とか、古い蔵を住宅に改装とか、銭湯をギャラリーに改装とか、事例を挙げはじめたらきりがありません。そんな改装モノの目新しいケースがこの書店なのだといえるでしょう。
これに追随して、いろんな改装書店が出てくると楽しそうですね。ということで、例のごとく、あれこれ考えてみました。
【駅のプラットフォームを本屋さんに】
10番線くらいまである大きな駅をまるごと本屋さんに。吹き晒しなので、台風が来たりすると本がびしょぬれになっちゃいますから、気候がおだやかで乾燥した地域限定です(あるいは、ヨーロッパの巨大ターミナルステーションのように、大きな天蓋があればいいのかな)。
プラットフォームごとに、日本文学は1番線、コミックは7番線などと分かれています。売り場が細長いので端から端まで探すのはたいへんですが、本の搬入に貨車が使える、という利点もあります(でも、使わないよね)。
【スーパーを本屋さんに】
まとめ買いをしたいときに便利。だだっ広い売り場の中を、カートをガラガラと押しながら、本をピックアップしていきます。生鮮食品売り場に平積みになっているのは、話題の新刊本です。
会計で並んでいると、レジの脇に並べられたちょっとおもしろそうな文庫本などが目に入って、思わずそれもカートに入れてしまうので、余計な買い物が増えそうです。
【銭湯を本屋さんに】
ジャンル限定の専門書店。男湯では男性向けアダルト書籍、女湯ではやおい本を扱っています。
‥‥男女ともに、入りにくい本屋さんかしら。
【坑道を本屋さんに】
古い鉱山の坑道をそのまま本屋さんに。坑道の壁には本棚がうがたれ、本がぎっしり並んでいます。
さまざまに枝分かれした坑道のうち、たとえば、雑誌は5番坑道、文庫は9番坑道へ。何の表示もない狭い坑道にうっかり入り込んだりすると、迷子になって戻ってこれなくなるかもしれないので、要注意です。深いところへは、トロッコに乗っていきましょう。ときどき、キキキ、とコウモリが目の前を飛んでいったりするのは、坑道書店ならではのおもむき。
坑道ってじめじめしてそうですから湿気対策がたいへんそうですが、それさえ解決できればなかなかステキな本屋さんになりそうです。
【小学校を本屋さんに】
廃校になった小学校の校舎をまるごとひとつの本屋さんに。机とイスを取っ払って本棚を入れることになるのはしかたがありませんが、それ以外はできる限り学校としての原状をとどめておくのがミソです。
今やレジになっている昇降口にいる店員さんに、たとえば、
「今年のノーベル文学賞をとったドリス・レッシングの本はどこですか?」
ときくと、
「えーと、海外文学(現代)ですから、2年2組にございます」
といわれるのね。リノリウム張り(板張りでもいいけど)の廊下(新刊の書名が墨で黒々と書かれた習字紙があちこちに張られています)をたどっていって、ドアの上に「2ねん2くみ」と掲示された教室を見つけ、引き戸をガラガラと開けると、中にはずらりと本棚が並んでいます。黒板にはチョークで、新刊やフェアの案内が書いてある。
レッシングはこれまでは本棚の「英国文学(現代)」のところを隅々まで探さないといけないところでしたが、ノーベル賞を受賞したばかりとあって、平積みになってます。もちろん、クリーム色のスチールパイプが懐かしい、あの机の上に。
一般教室には主に小説やエッセイのたぐい、文庫、コミック、雑誌などが配されており、何の本が何年何組にあるか、慣れるまで多少手間がかかりますが、その他、たとえば科学関係の本は理科室に、料理本は家庭科室、美術は図工室、コンピュータ関連は視聴覚室、教育関連は職員室に置いてあります。成年向け書籍は、保健室かな‥‥と思いきや、なぜか体育用具室に置いてあったりして、いや、うちの本屋は体育用具室はスポーツ関連です、
「アダルトものは、音楽準備室で」
などということもあったりして、そのあたりについては経営者の見識と趣味が問われるところでしょう。
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どんだけ本がいるんだよ! というツッコミは置いておくとして(笑)、当然のことながら、ある本をくいっと引っ張ると、隣の本棚がガガーっとスライドして新しい通路が出てくる、という仕掛けはぜひ実現してほしいところです。
司書さんなんかが、
「昨日、本を探しに行ったタナカくんが、まだ帰ってこないんでけど」
とかいうことになったりして。
それにしても、ああいう巨大迷路、どうなっちゃったんでしょう。さいきんめっきり見ることもきくこともないですね。昔の小説を読むと、ときどき「八幡の薮知らず」が出てくる程度で‥‥。
ちなみに、たまたま、同じネタで次のコラムを書いたところでした。