2007年08月21日

デスノート風「人間失格」をまねる

すでに出版業界以外でも大きな話題になってますが、集英社文庫の「人間失格」が漫画家・小畑健の表紙イラストのおかげで1カ月半で7万5千部を売り上げたそうですね。小畑健のイラスト、というより「DEATH NOTE」の主人公・キラこと夜神月(やがみ・らいと)そのまんまのイラスト、ということで、「人間失格」の主人公に夜神月のキャラクターを重ねたところが大いに受けたのでしょう。「週刊少年ジャンプ」を擁している集英社ならではのコラボ。正直いって、内容的には「人間失格」と夜神月ってぜんぜん関係なくて、むしろ「罪と罰」なんかの方がピッタリなんですが(自分は何してもいいんだと思ってるところとか、あるいは予審判事ポルフィーリィを相手にした、こいつは俺を疑っているんだろうかどうだろうか、というジリジリするような心理戦とか。「人間失格」ならむしろエヴァンゲリオンのシンジくんあたりなのでは)、勝てば官軍、売れればいいんです。それに、分厚い「罪と罰」上下二巻では、「DEATH NOTE」のキャラを総動員しても、さすがにここまで売れないでしょうし。

ともあれ、工夫によってはお堅いブンガクも大いに売れる!と、他の出版社も柳の下の二匹目、三匹目のどじょうをねらっていることと思います(そういえば、山本周五郎「さぶ」も池上遼一の男組的な表紙でしたが、あれも素直に「男組」あるいは「男大空」そのまんまの表紙にすればよかったのかも)。すでに、賢い編集者の人がいろいろ企画を錬っているんでしょうが、遅ればせながら、ここでもちょっと考えてみましょう。
どんな小説に、どんなマンガの表紙がいいのか‥‥。

「MONSTER」でヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」
名門の幼い兄妹の心身を支配し、彼らを堕落させようとする亡霊‥‥。それは語り手である家庭教師の妄想でしかないのか、どうなのか‥‥。という話に出てくる男の子のイメージって、浦沢直樹「MONSTER」のヨハンでいいと思うのだけど。

「美味しんぼ」の海原雄山と栗田さんが表紙で、川端康成「山の音」
六十を過ぎた信吾と、息子の嫁・菊子さんとの間の微妙な交情‥‥、ということで、海原雄山×栗田さんは、ありかも。あるいは嫁の颯子さんの足をなめちゃったりする谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」のほうがどちらかというと「美味しんぼ」っぽいかしら。「こ、この味は‥‥!」みたいな。

「ブラックジャック」または「ブラックジャックによろしく」で泉鏡花「外科室」
麻酔を打たれると、無意識にあなたへの思いを口にしてしまうかもしれない、だから私は麻酔なしで手術を受けます‥‥、という「外科室」。なんとなく「ブラックジャック」のエピソードにあってもおかしくない気もするけど、鏡花ではイメージが違うかなあ。

「NARUTO」で山田風太郎「甲賀忍法帖」
‥‥ダメだよね。忍者、というだけしか共通点がないし。っていうか、NARUTOの絵にしなくても山田風太郎は売れてるし。むしろ山田風太郎の何たるかを知らず、絵だけ見て買っちゃったNARUTOファン女子中学生が、電車の中でこれを読もうとしてちょっと困ったりするかもしれないし。

「ONE PIECE」で三島由紀夫「午後の曳航」
‥‥これも単に、船乗り、というだけ。っていうか、ONE PIECEは船乗りじゃなくて海賊か。崇拝する船乗りの竜二が、自分の母と結婚して海を捨てようとしているのを知った13歳の少年・登は‥‥、という話。これもやはり、表紙だけ見てジャケ買いした中学生女子が、なんとなく腐女子方面に目覚めてしまいそうで、あまり教育上よくなさそう。あ、でも、ONE PIECEでジャケ買いするような女子は、すでに腐女子か。

「あずまんが大王」で谷崎潤一郎「細雪」
女子がたくさん出てくる話だから、ってことで。でもこんな表紙では、「細雪」の世界、台なし。

仮面ライダーの表紙でカフカ「変身」
そりゃ、「虫」に変身する話だけど、ちょっと‥‥。

‥‥案外、難しいものです。
posted by 清太郎 at 23:34| Comment(7) | TrackBack(1) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このニュースを見て”絶対清太郎さんが妄想している!”と思ってきてみたらやはり。

表紙イラストって印税入るのでしょうか。
すると大場さんが「夜神月は私の作ったキャラクターである」と訴えて、日本中が注目する裁判の焦点は「この表紙はライトか否か」となって、かり出された精神分析医は「デスノート」と「人間失格」を全部読んでライトと葉蔵の同一性についてコメントして・・・
ってなるのでしょうか。
楽しみです。

それにしてもライトくんに烙印を押しちゃうようなタイトルの作品表紙にしちゃうなんて、ジャンプサイドはよかったのかしら。
小畑さんが太宰の似顔絵を描けばそれだけで売れた感じがするのですが。


Posted by nozom at 2007年08月22日 19:20
ボクも本屋であの本を見かけて、友人と「これ絶対ライトだよな」と話してました。
う〜む、確かにあれがライトだとしたら、印税はどうなっちゃうんでしょうか。
でももしかしたら、小畑さんはアレで太宰治の似顔絵を描いたつもりだったのかも知れません。
Posted by 黄黒真直 at 2007年08月22日 22:35
すっかりタイミングを逃しましたが(^^; >nozomさん

たしかに表紙の印税?はどうなってるんでしょうね。夜神月そのまんまのように見えるけど、(C)DEATH NOTEと書いてあるわけでもなし、原作者の大場つぐみは関係なしなのかなあ。
ともあれ、今後、集英社文庫の表紙にどんどんジャンプのキャラが進出していくことを期待してます。講談社文庫には「はじめの一歩」とかかな。
Posted by 清太郎 at 2007年08月22日 23:09
 こんばんは、樽井です。
 巷でのあの表紙のおかげ論争のせいでしょうか、アマゾンでレビューを書いたらえらくポイントが伸びています。なんか複雑な心境です。
 それはさておき、あれはライトにしか見えませんが、小畑さんに、「人間失格」の表紙を書いてと依頼して書いてきたのがあれだとしたら、小畑さんには正式に印税はちゃんとくるでしょうねぇ、しかも結構な額で。
 ただ大場さんにはどうでしょう? うーん。印税といえば、マガジンで連載中の花形満くんの漫画ではどれくらい梶原一騎さんの一族の方に印税が入るんでしょうかねぇ。
Posted by 樽井 at 2007年08月23日 00:11
小説の表紙を漫画家が描く、というのがウケてる一方で、漫画が文庫化されるときにはイラストを入れないデザインにしたりして、不思議ですね。
角川ホラー文庫をうめずかずおの表紙にしたりとか・・・しかしうめず先生でジャケ買いはあまり期待できないのかも。
Posted by あさひ at 2007年08月23日 00:46
いつも楽しく拝見しております!

『細雪』は『涼宮ハルヒ』ならば、しっくりくるんじゃないでしょうか?

鶴子:みくる
幸子:キョン
雪子:長門
妙子:ハルヒ
悦子:キョンの妹

といったかんじです。

『変身』は、やっぱり荒木飛呂彦先生でしょう!
『ジョジョ』よりも『バオー来訪者』あたりの画風がマッチしそうです。

冒頭で虫になったザムザにズームしていきながら「ゴゴゴゴゴ…」

…って、マンガじゃないんでしたね(^^;)
Posted by ファミコンキッド at 2007年08月23日 11:03
>樽井さん
あ、ホントだ、樽井さんのレビューがありました。
中身の「人間失格」の著作権が消滅しているだけに、でもって、ほぼこの表紙のおかげで売れただけに、ちょっと気になりますね。でもさっきamazon見て気付いたんだけど、これ1冊270円なんですね。ユーズド価格かと思っちゃった。
しかしそうなると、7万5000部売れたところで、2千万そこそこか‥‥。光文社新訳文庫のカラマーゾフの兄弟が26万いくらかで30万部はかたいという話だから、それに比べるとたった10分の1。印税が入るにせよ、マンガそのものの印税やアニメや映画の著作権料なんかに比べると、ホントに微々たるものかも。

>あさひさん
そうですね、そのあたりのミスマッチというか、組み合わせの妙が受けるわけですね。こういうのを見てると、「ポスト産業資本主義においては、差異のみが利潤を生み出す」という議論が頭をよぎります。
楳図かずおは、ホラー文庫ではそのまんますぎますから、あえてはずして、たとえば阿部公房「砂の女」とか、そのあたりならどうかしら。

>ファミコンキッドさん
涼宮ハルヒで細雪! それいい! キャラクターを脳内変換しながら、あらためて細雪を読みたくなりました。雪子が長門有希か‥‥、微妙なような、それでもいいような。
「変身」の毒虫が、ゴゴゴゴゴ‥‥、というのも、ありそう! その表紙にしたら、倍くらいは売れるんじゃないでしょうか。
Posted by 清太郎 at 2007年08月24日 00:27
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