2007年07月31日

本踊り

盆踊りは仏教の念仏踊りを起源とし、先祖供養などの民俗と混ざり合いつつ、現在のような形になっていったといわれています。今でこそ単なる夏の風物詩となっている盆踊りですが、そもそもは、この世とあの世をつなぐハレの行事、異界への扉を開く民俗的な仕掛けでもあったわけですね。
本が売れないとされる8月、わが本業界も、この盆踊りを取り入れて、少しは市場を盛り上げてはどうでしょうか。盆踊りならぬ、「本踊り」で。

出版されたものの話題になることもなく静かに消えていった無数の本たち、一時はベストセラーになったものの今やすっかり忘れ去られた過去の本たちへの追善供養の思いをこめて、ピーヒャラ、トン、トン、哀調を帯びた笛と太鼓の音色にのりつつ、
「ドスとその名はいかついけれど、よく見りゃチョイといい男〜」
ドストエフスキー音頭などを踊るんです。
神保町の交差点を会場にした「神保町本踊り大会」や、護国寺境内で開催する「講談社盆踊り大会」などが行われれば、多少は耳目を集め、話題になるんじゃないでしょうか。もちろん、会場にはさまざまな屋台がズラリと並び、訪れた人たちは、古本釣りや古本射的、古本輪投げなどを楽しめます。

そうして、浴衣姿の書店員さんや編集者と一緒になって、櫓を囲んで輪になって、一心不乱に踊っていると、やがて供養の思いが通じ、この世とあの世がつながって、ふと気がつくと、あら不思議や、目の前に落ちているのはボン書店刊行の「童貞女受胎」初版、まあその先には春秋社の「特異兒童作品集」初版、おやその先には‥‥、と次々と現れる稀覯本、初版本、絶版本の数々に心奪われ‥‥。
そうして、本踊りが終わるころには、いつの間にか、すぐそばで踊っていたはずの人が消えていて、
「ああ、あの人は、本のあの世へと旅立っていったんだなあ」
と、本のこの世に残された人たちは、ちょっと羨ましいような、寂しいような、怖いような気持ちを抱えて、静かに家路につく‥‥。うーむ、いいではないか、これぞ日本の夏。

いや、しかし、考えてみると、供養してるのは、話題になることすらなかった本や、時代遅れの過去のベストセラーなのだから、いつの間にか目の前に現れる本は素敵な稀覯本ではなく、むしろ数年前の実用書のたぐいや春陽文庫のサラリーマン小説、あるいは「アイカコッカ」とか「大往生」とか「それいけ×ココロジー」とかなのかも。そんな本ばかりが待ってる「本のあの世」なら、別に行きたくないよねえ。


posted by 清太郎 at 17:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ドストエフスキー音頭、夏になると哀感漂うメロディーが思い出されます。あれは、死せる本達の鎮魂歌だったのですねえ。
真っ白な「三年連用日記」とか「簿記三級問題集」なんかも、涙を誘うと思います。いちおう本のうちですし。
もうすぐ、お盆、いや、お本ですねえ。
Posted by すずめの巣 at 2007年07月31日 23:06
今年はドストエフスキーの当たり年でもあるのだし、ドストエフスキーへの鎮魂の思いを込めて、みんなでドストエフスキー音頭を踊りましょう。(しかし、むしろ思いをこの世に残したドストエフスキーが化けて出て、「カラマーゾフの兄弟」の続きを書いちゃう、というほうがいいのかもしれない。)
問題集とか受験参考書とかが落ちていたら、手に取るどころか背を向けちゃいますね‥‥。
Posted by 清太郎 at 2007年08月01日 11:44
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。