2010年12月23日

2010読書界しょんぼり番付

えー、そんなわけで、「2010読書界番付」に続きまして、恒例の「読書界しょんぼり番付」です。
今年、読書界で最もしょんぼりだったのは‥‥、などともったいぶらなくてもおわかりでしょうが、横綱は、例のアレです。
大関以下は、いろいろ異論があるでしょうが、まあ「読書界番付」以上に、私の趣味と独断によるランキングですので、そのあたりはご了承ください。


読書界しょんぼり番付

西
国民読書年 横綱 東京都青少年健全育成条例改正
電子書籍 大関 ホーガン死去
俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 関脇 スイングジャーナル休刊
理論社破綻 小結 山田美妙

以下、解説。

■横綱
国民読書年
東京都青少年健全育成条例改正

鳴り物入りで始まった(わけでもないか)国民読書年、当初の見積もりでは、これのおかげで国民はもう本読みまくり、本買いまくり。本の読みすぎで経済は停滞し、でも出版社と取次と本屋さんはガハガハのウハウハ、出版市場は空前絶後の3兆円の大台に乗り、図書館も利用されまくって司書さん過労死、国民読書年関連のマスコットキャラ「ヨミネエ」は大ブレイクし、キャラクターグッズも売れに売れ、来春にはアニメ化決定、紅白にも出場! ということになるはずでしたが、えー、結果は、ご覧のとおり。予想の中で当たったのは、経済が停滞したことくらい。
っていうか、もう今さら誰も(まあ、おそらく一部の図書館関係者を除けば)、今年が国民読書年だったなんて、覚えていないし。国民読書年の国会決議をした議員さんも、すっかり忘れてることでしょう。
たぶん、いちばんいい落としどころは、
「みんな忘れてるんだし、国民読書年なんて、なかったことにすっか」
というあたりだと思います。
「えー、それでいいんですか!?」
と憤る人もいるかもしれないけど、でも、律儀に総括して、
「国民読書年は失敗でした」
とかいうよりも、なかったことにしたほうが、もう1回できるし(「やだ、何言ってるの、国民読書年は2010年じゃないわよー、2011年よー」と、しれっとした顔で言えば、たぶんみんな「あ、そういえば、そうだっけ」と信じると思う)、前向きでいいと思います。

12月15日、『KAGEROU』の発売日に、東京都議会本会議では、反社会的で過激な性描写のあるマンガを子どもに売らないよう規制する「青少年健全育成条例改正案」を可決しました。「非実在青少年」という文言はありませんが、まあ春に一度否決された案の焼き直しね。
作家はもちろん、ネットの住民や文化人、出版社も大反対で、東京国際アニメフェアへの参加を拒否したりしてます。
詳しい経緯はさておき、この条例の問題は、
「マンガは子どもが読むものである」
という前提に立ってるところだと思います。マンガが子どもしか読まないものであれば、そりゃもちろん、たとえ子どもの成長にとってときには汚れたもの・危ないものも必要だ、という意見があるとしても、やっぱり性暴力とか、含めるべきではないでしょう。
でも、実際のところ、ずいぶん前から、マンガってぜんぜん子どもだけのものじゃないし、そのあたりのことを、わかってるんだかわかってないんだか、とにかくちゃんと議論しないままに、成立しちゃったことが残念です。
っていうか、「マンガは子どもが読むものである」とか言っておきながら、「クールジャパンでコンテンツ輸出でウハウハしよう」などというところが、どうにもいやらしい気がします。 あと、問題点としては、性暴力と近親相姦が同レベルで扱われてること。これって、ぜんぜん同じレベルじゃないでしょう。よくわからん‥‥。

■大関
電子書籍
ホーガン死去

あれ? 電子書籍って、「読書界番付」のほうの横綱じゃなかったっけ?
と思う人も多いでしょうけど、電子書籍は、「読書界番付」上位であると同時に「しょんぼり」の上位でもあると思います。
だって、読書界を大いに賑わせたといわれる電子書籍ではありますが、結局のところ、「電子書籍だ、わー、タイヘンだ!」などと騒いでいるのは、おそらく、出版社と取次、一部の書店、一部の図書館関係者、それと一部の新しもの好きくらいで、多くの書店にとっては電子書籍だろうが何だろうが売り上げは右肩下がりだし、多くの図書館関係者にとっては電子書籍云々以前に司書の待遇改善しろとか図書購入費増やせとか議論すべきことは山積みだし、そして一般の読者にとっては、今のところ日本で出てる電子書籍は、紙の本に比べて、ぜんぜん魅力的じゃないんだもの。
本というのは、「売りもの」であると同時に「読むもの」なのであって、今年の「電子書籍元年」は「売りもの」としての電子書籍にとっては元年だった(そして「読書界番付」の横綱だった)のかもしれないけれど、「読むもの」としては残念ながらいまだ紀元前、夜明け前、「しょんぼり番付」上位確定、だったように思います。
個人的にも、これまでのところの電子書籍ブームに対しては、「要するに、電子書籍で儲けようと思ってるだけでしょ」と、なんだか白けた気分。
思うに、たとえば、部屋にいくつも本棚があるような本好きにとって、電子書籍の魅力はやっぱり「容積ゼロ」ということですよね。床に山と積まれた本を見ながら「これが全部電子書籍になったら、どれだけ家の中がすっきりすることか」と、何年か前に電子書籍のことを初めて聞いたとき、心ときめいた人は多いでしょう。
しかし、たとえ容積ゼロで保存できたとしても、それが「3年経ったら、読めなくなるかも」なんて代物だとしたら、とてもではないけれど使う気にはなりません。
本というのは、まあ音楽もそうなんだろうけど、1冊買って、読んで、あるいは読みさしのまま、あるいは読まずに、そのまま本棚の奥にしまいこんで、いつしか10年とか20年とか経って、その間一度も開いたことはなく、でもたとえば何か考え事をしているときに(ブログのネタとかね)、本棚をつらつら眺めていて、その10年以上前に買った本の背表紙がチラと目に入って、ハッと思いついて、手にとってパラパラめくり、あー、そうだ! とか何とか、そんな使われ方をするものです。読んで終わり、じゃないのね。
電子書籍には、もちろん使い勝手のよさも充実したラインナップも必要だけど、まずはやっぱり、この先ずっと使えます、10年後も20年後もその時代の端末でパッと読めます、という、そんな保証、安心感が不可欠だと思うんですよね。
もちろん紙の本だって、買って本棚に並べるばかりではなくて、さっと読んで古本屋さんに売っちゃったり、図書館で借りたり、という本もいっぱいありますが、だからといって、自分でお金を出して買った電子書籍が、いつの間にか読めなくなっていてもいいよー、ぜんぜん平気、という人は、あんまりいないんじゃないでしょうか。
とはいうものの、そんなこと言ってるのは一部の本好きだけで、世の多くの人にとっては、
「え? 何、そんなこと考えてるの? バカじゃないの? 本なんてテキトーに読み捨てればいいでしょ。何こだわってんの。キモー。ウケルwww」
ということなのかもしれないけど‥‥。

えーと、大関のもう一方、ホーガンというのはSF作家、ジェイムズ・P・ホーガンです。『断絶への航海』とかの人。
今年もいろんな作家が死にました。主だったところを挙げると、
・ロバート・B・パーカー(1月)
・北森鴻(1月)
・サリンジャー(1月)
・立松和平(2月)
・清水一行(3月)
・井上ひさし(4月)
・サラマーゴ(6月)
・つかこうへい(7月)
・ミラン・クンデラ(あのクンデラかと思ったら、あのクンデラのいとこでした)(8月)
・三浦哲郎(8月)
・佐野洋子(11月)
これらいろんな逝去作家を代表して、ホーガンが大関です。
まあ人によっては、
「ちょ、ちょっと、代表がホーガンって何、サリンジャーに決まってるでしょ!」
「いや、井上ひさし」
「ていうか、佐野洋子」
と、異論は多々あると思いますが、まあ、そういう方は、ご自分で番付をつくってください。

■関脇
俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長
スイングジャーナル休刊

今年は、というか今年も、なのかどうかよくわかんないけど、盗作騒ぎが話題になりました。秋には、新人賞に選ばれた詩が盗作だったことが発覚しました、それよりも注目は、第16回電撃小説大賞最終選考作だったのに自主回収・絶版になっちゃった『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』。
タイトルからしてスクラッチビルド、というかコピペっぽいのですが、内容も先行作品との類似表現があまりに多すぎました。
まあでも、どうせ読者も、どこかで読んだことあるような似たような作品ばかり読みたがってるんでしょうけどね‥‥。

さて、今年もいろんな雑誌が休刊になりました。
・スコラ
・ハイファッション
・銀花
・NAVI
などなど。とはいっても、昨年ほどではないですよね。とりあえず休刊ラッシュは落ち着いたんでしょうか。
そんな休刊雑誌を代表して、ジャズ専門誌のスイングジャーナル。7月号が最終号になりました。
これを取り上げたのは、特に思い入れがあるからというわけではなくて、この雑誌が休刊した後、むしろジャズって静かにブームになってるらしいから。「女子ジャズ」とかいって、初心者の女子向けのCDが売れたりしてるみたいだし。
まあ、だからといって、休刊しないでもうちょっとがんばってればよかった、ということではなくて、たぶん「スイングジャーナル」的なジャズの紹介っていうが、もういらなくなっていたってことなんでしょうけど‥‥。しょんぼり‥‥。

■小結
理論社破綻
山田美妙

一昨年、草思社が経営破綻したときには、これから出版社が続々倒産するのでは!? と、みんな青くなりましたが、どこも苦しいとはいえ、ネームバリューのある出版社の倒産って、そんなにあるわけじゃないのね。
そんな中、今年、頭ひとつ抜け出した(?)のが、理論社でした。
理論社っていったら、森絵都の『カラフル』。経営破綻とか民事再生法とかとは無縁のイメージでしたが、内情はタイヘンだったのねー。とりあえず、BS11デジタルを運営する日本BS放送が子会社化することになりました。

しょんぼり番付の最後は、山田美妙。
って、えーと、それ、何? 山田ってことは、人名? 人? 作家? 女子? ヤマダミ・タエちゃん?
という人が多いことでしょう。
もちろん作家です。男です。ヤマダ・ビミョウ。今年、没後百年を迎えた明治の文人。
今年2010年は、トルストイ、O・ヘンリ、マーク・トウェインなんかの没後百年でしたが、日本では大して話題にもなりませんでしたね。
山田美妙も、
「言文一致の先駆者は美妙だ! 二葉亭四迷よりもスゴイぞ!!」
と、没後百年を機にあらためてスポットが当たるかと思いきや、ぜんぜんそんなことにはなりませんでした。しょんぼり‥‥。

ということで、以上、今年のしょんぼりでした。
まあでも総じて、年間売上が2兆円を割り込んで衰退の一途を辿る出版界といいつつも、こうしてまとめてみると、思ったほどのしょんぼりではない1年だった、という気がします。
来年は何かいいことあるといいですね‥‥。


posted by 清太郎 at 22:02| Comment(5) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
死んだのはちがうクンデラではありませんか? ミラン・クンデラの存在は,いまだ死ぬほど軽くはないようですが……。
Posted by はる at 2010年12月23日 23:09
山田美妙、そうだったのか。知らなかったです。ごめんよ美妙。
 
電子書籍、が、本じゃないところに行こうとしてるように思えてどうにも手がでません。
テキストオンリーじゃなくて、なんか音楽とか映像とか特典満載!みたいにしようとしてたり。(って電子書籍を何一つ手にしてないのでイメージなんだけど)
まあそりゃ本も装丁とか挿画とかはあるにせよ。
本を読むって自分の脳内で自分の好きにできるのがよくって、読むスピードとかも自分の好きにできるのがよくって、と思うのに、余計なもんくっつけるな、と、なんとなく拒否感が。
そんなの私だけかなあ。余計なもんくっつけるのは結局単価上げようってわけでしょ、とか思うし。
最初電子書籍全盛になったらどんな本でも500円程度になったりしてーと甘いこと思ったりしてたけれども、まーそりゃないんですね。商売だしなあ。
で、そう。いつかデータが消えるダメになる不安が。紙の本に未だ劣るような不安が。
って、いろいろ個人的には拒否感があるけれども、そのうち実際読むようになれば軽くていいわ〜とかすぐ慣れるのかなあ。
なんにせよ電子書籍、という別なモノが生まれているようで、それはそれでいいのかもです。
まだ自分は紙の本や、文庫本しか買う気にならないです。
Posted by シキ at 2010年12月24日 10:22
ハルさん。
わー、ホントだ。詩人で、いとこみたいですね。ご指摘ありがとう!

シキさん。
そう、私も甘いこと考えてたんだけど、ぜんぜんそういうわけじゃないみたい‥‥。なんか、「電子書籍でどうやって儲けるか」ばかりで、結局、読者置いてきぼり、のような気がします。
映像とか音楽とかモリモリのリッチな電子書籍も、やっぱり微妙だよねー。まあそれはそれで、コンテンツとして楽しむのはアリなんだろうけど、「本」じゃないわな。文字だけ読ませてください‥‥、と確かに思います。
とりあえず、しばらくは過渡期だよね。
Posted by 清太郎 at 2010年12月26日 22:16
せっかく国民読書年(紙の本)と電子書籍がぶつかったんですから、
ヨミネエVS電子書籍軍団
みたいな展開があってもよさそうだったのに、残念でした。

電子書籍に直接の興味はないのですが、iPadは欲しいかな、って思ってます。
iPhoneでもいいけど。とにかくスマートフォン的なヤツ。
百科事典とか広辞苑とかを電子書籍にぶち込んで、
電車の中で暇つぶしにパラパラめくる……っていうのがやってみたい。
Posted by 黄黒真直 at 2010年12月28日 12:25
黄黒さん。
わー、放置しちゃってて、ごめんなさい! レスつけたつもりでつけてなかった‥‥。あけましておめでとうございます。
ヨミネエVS電子書籍、なんだかいいですねえ。一敗地にまみれたヨミネエですが、ここはひとつ奮起して、
「国民読書年II ヨミネエの逆襲」
などということになってほしいものです。
では、今年もよろしくね。
Posted by 清太郎 at 2011年01月10日 21:54
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