2010年06月30日

i文学少女

コンテンツについての議論が抜け落ちたまま、電子書籍に関する話題はあいかわらず過熱気味ですね。先日も、電子書籍販売のパピレスの上場に投資家が飛びついてましたし。
短期的な動向はまだまだ予断を許しませんが、しかし長期的には、おおかたのコンテンツが電子書籍の形で読めるようになる、という未来は避けられようがないように見えます。
そしてそうなったとき、音楽におけるiTunesのような存在になれる者はあるのか。電子書籍販売を、巨大な販売サイトが寡占することになるのか。今のところKindleやiBookstoreが一歩抜け出ているのでしょうが、しかしまあ、ニッポンはニッポンらしく、ニッチなところを狙うというのもありのような気がします。
というのが今日の話題。

KindleやiBookstoreでは、表示されるのは、電子書籍だけです。
当たり前といえば当たり前ですが、でも考えてみると、現実の本屋さんであれば、本だけがあるわけではありません。
店員さんがいるし、お客さんもいます。本屋さんには、人がいるのです。
本を選んでいる自分の隣に、やっぱり本を選んでいる文学少女などがいて、棚にある本に手を伸ばしたら、隣の彼女も偶然その本に手を伸ばして、手と手がふれあい、
「あっ」
ということにもなるのです。
KindleやiBookstoreでは、そんなことはできません(今のところ)。

となると、KindleやiBookstoreに対抗するには、それができるようになればいいのではないか。
電子書籍販売サイトだけど、電子書籍だけを売ってるんじゃなくて、ニッポンお得意の、
「美少女」
これを付け加えればいいのではないか。
DSの恋愛シミュレーション「ラブプラス」が人気を呼びましたが、ああいうのを電子書籍販売サイトに応用してみるのです。
具体的には、本の表紙や本棚が表示されているその脇に、本屋さんを訪れている(という設定の)アニメ顔の女子が表示されるのね。画面の中の文学少女、i文学少女です。
女子のバリエーションはさまざま。お客さんですから、入れ替わり立ち代り、いろんな女子が登場します。
定番のセーラー服のメガネっ娘はもちろん、ワンピースの清楚なお姉さまに赤いランドセルの小学生、クールな雰囲気のOLさん、むっちり和服の年増美女‥‥。
現実の本屋さんで、そんな美少女、美女が続々と現れても、本に気をとられて気づかないか、あるいは気づいてもチラチラ横目で眺めるだけですが、ここは電子書籍を販売する仮想書店です。もう、女子に声かけ放題。
「ねー、おねえさん、何読んでるの?」
とか、
「一緒に本を選びませんか」
とか、いくらでも話しかけられます。
そのたびごとに相手の女子は、ポッと頬を赤らめたり、キッとにらみつけたり。
ときには、
「さいきんイーガン読んでSFにはまっちゃったんですけど、何かおすすめ、ありますか?」
などと会話が成立したりする。
と、まあここまでは、無料。別に電子書籍を購入しなくても、ちょっとサイトに立ち寄るだけで楽しめる、ということになっています。
が、もちろん、本当の楽しみは、このサイトで電子書籍を買ってこそ、です。
電子書籍を購入するたびに、女子と会話できる確率が高まるわけですね。会話のキャッチボールもできるようになる。
本を買っていると、たとえば、庄野潤三の作品がカート内に入っているときに、
「あっ、その人、私も好きなんです」
と、女子の方から声をかけられるようにもなります。
彼女たちはそれぞれ、SFファンとか国文マニアとか歴女とか隠れ腐女子とか、本の好みがいろいろ設定されていて、自分の購入履歴を反映して、ジャンルが重なる女子とは、より頻繁に会って、おしゃべりできます。
嗜好の似ている女子と仲良くなるのもよし、あるいは好みのタイプの女子と仲良くなるために、あまり読んだことのないジャンルの本にトライしてみるのもよし、です。

そうしてだんだん親密になると、ついに告白イベント。
「お、お、おつきあい、しませんか」
「‥‥友達からでよければ‥‥」
ということになり、彼氏彼女ということになり、そうしてデート場所はやっぱり、同じ電子書籍販売サイト内。
「じゃあ、こんどの土曜、3時に、考古学の棚の前で待ち合わせね」
と約束して、土曜の3時過ぎに考古学の新刊をチェックすると、いつもの彼女がちょっとおめかしして現れて、
「もー、○○くん、遅いよー。ぷんぷん」
なんて言われたりして、でへへ。
そのまま一緒に仮想書店の中を見て回り、
「あっ、この本、おもしろいんだよ。○○くんも、読んでみれば?」
とすすめられたり、あるいはこちらから彼女にすすめたり。
そうして彼女を自分好みの女に育て上げていくのも、生身の女子相手にはなかなか実現できない、このサイトならではの楽しみです。
最初はラノベにしか興味を示さなかった彼女に、少しずつ少しずつ時代小説の味を覚えさせて、ついには、
「ねえ、この前○○くんが買ってた北原亞以子の新刊、あの、ちょっと、読みたい、かも‥‥」
と、おずおずと言わせた日には! あああ、むふう、もう、たまらん。

そうやってサイトに人気が出てくると、出版社側も積極的に販促に使おう、ということになります。広告費を出して、特殊設定を追加したりするわけです。たとえば、
「発売日から1カ月以内に購入すると、今つきあってる女子と海水浴に行くイベントが発生!」
とかいうのね。
海水浴ということは、本屋さんの中ではぜったい見られない、みみみ、み、水着姿が!!!
ということで、さして興味のない本でも、彼女の水着姿見たさに買う人続出です。
もちろん水着だけじゃなく、浴衣にメイド服、裸エプロン‥‥。本さえ買えば、彼女のいろんな姿を見ることができるとなると、一部の男子は、金に糸目はつけません。

そうして、さらにさらに親密になって、やがては本棚の陰でこっそりとチュー、でもってあまり人の来なさそうな東欧文学のあたりで、そっとスカートをたくしあげて‥‥、わー!!!
ということも思いのまま(年齢制限あり)。ひと通り楽しんだらリセットして、あらためてほかの女子と仲良くなりましょう。
あ、もちろん、女子向け(あるいは一部の男子向け)には、お客さんがみんなステキ男子ばかりのバージョンが用意されてますので、ご安心ください。

ちなみに、生身の彼女や奥さんがいるかたは、メールの新刊通知設定には気をつけましょう。
「○○くん、今週発売の森見登美彦の新刊、一緒に買いに行かない? いつものところで待ってるね!」
なんていうのがうっかり見つかっちゃったら、
「ちょっとアンタ! これ、どういうことよ!?」
と、たいへんなことになります。



posted by 清太郎 at 21:29| Comment(14) | TrackBack(1) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前回の記事とあわせて、何だか、毎日本屋に通っていれば週イチくらいの頻度で誰かと手が触れそうな気がしてきました。

商品の前段階として女の子を釣り餌にすると言う感じでもありますが、そうなると、飲み屋の看板娘に近いですね。
本の販売促進のためにセーラー服の少女……セーラー服でおさげで黒縁のメガネっ娘で図書委員でクラス委員の経験もあって成績も優秀だけれど体育だけはちょっぴり苦手で最近はお父さんに冷たくなりがちな難しいお年頃の少女を用意すると言うのは、理に適ったやりかたなのではないかと思います。

アニメ絵じゃなく、ちょっと粗描きな墨絵っぽい感じでどこか開設してくれないかしら。
Posted by ama at 2010年07月01日 11:05
なるほど、その手がありましたか。

オンラインゲーム(ラグナロクとか)みたいに、自分の分身を使ってバーチャル本屋さんで買い物…
みたいなのを想像していましたが。
よく考えたら、これで女の子と出会う頻度は、実際の本屋さんで出会う頻度と同じぐらいでしょうからね。
ラブプラスバージョンの方が圧倒的にヒットしそうです。
っていうか、どちらのバージョンも本気で現実味があるっていうのが、なんというか…。
これが技術の進歩なんでしょうなぁ。
Posted by 黄黒真直 at 2010年07月01日 13:42
amaさん。
差別化するとしたら、やっぱりそのあたりがお手軽(かどうかはわかんないけど)で妥当かと思います。ぜひ、セーラー服でおさげで黒縁のメガネっ娘で図書委員でクラス委員の経験もあって成績も優秀だけれど体育だけはちょっぴり苦手で最近はお父さんに冷たくなりがちな難しいお年頃の少女を求めて、電子書籍販売サイトに通いつめましょう。
しかし、ちょっと粗描きな墨絵っぽい感じって、それはそれでかなりマニアックですね(^^;

黄黒さん。
ご指摘の通り、アバターを使うと、結局、人対人になりますからね。こんな好き勝手なことはできませんからね。声をかけたりとか、なかなかできないだろうし。もちろん、そういう下心抜きにすれば、SNS的な電子書籍販売サイトは、コンテンツさえ揃えばすぐに出てくる気がします。
もっとも、こっちのラブプラスっぽいサイトも、どっかの企業で準備中かもしれませんが‥‥。
Posted by 清太郎 at 2010年07月01日 23:58
いいアイデアですね。感動しました。しかしそれが実現してしまうと、書店の客離れが更に進みそうですw

全然関係ない話。図書館で働いているのですが、返本台に返却された本がやたら甘い匂いがしました。誰かに言いたかったのでここに書きました。また読みにきます!
Posted by じゃぱな at 2010年07月04日 16:18
じゃばなさん。
書店にはたぶん「三次元じゃなきゃダメ!」というお客さんが来るから、だいじょうぶです(^^;
甘い匂いのする本、いいですね。なんかちょっとロマンがあって。「この本を前に借りた人は‥‥(ぽわぽわぽわ〜ん)」と妄想が広がりそうです。
Posted by 清太郎 at 2010年07月06日 00:10
うわこれすごくいい!
i文学青年、i文学眼鏡スーツ男子、i執事、i文学書生。。。夢とロマンです。きゃ〜。
 
なんていうかほんとに、日本のパワーをもってすればすぐにも実現しそうではないのか。。。
ほ、本が好きで読みたいだけだからね!と言い訳しながらどっぷりバーチャル書店に入り浸ります。
好みのセリフを追加できるオプションとか欲しいですねー。どのタイミングでそのセリフが出てくるか、ドキドキワクワク!
Posted by シキ at 2010年07月09日 09:18
素敵すぎます!かくなる上は
『図書館LOVERS』
美人司書さん(授業をサボって遊びに行く)
卒業イベント(『せっせんぱいのボタン下さい』)
貸し出しカードイベント(誰も書いてない貸し出しカードの本を借りると普段冷たい図書委員の子が『あんたなかなか渋いのよんでんじゃん』と声をかけてくれる)
などイベント多数あり。

とか、いいですね。

そんな私の憧れは近所の本屋イケメン店長。1年間かけてメールとか出来るようになったのに、最近(気になる)女の人へのプレゼントを選ぶから良いお店教えてほしい、と相談されました(爆
うぇぇぇん 。゚(ノ゚´Д`゚)゚。
Posted by コムギ at 2010年07月10日 01:19
シキさん。
やる気さえあれば今の技術でじゅうぶんつくれそうなんだけど、だれかやらないのかなあ。
女子向けにもけっこういろいろ出てきそうですよね。
でもって、もうちょっとしたらwikiみたいにキャラを自由にカスタマイズできるようになったりしていくの。変なカスタマイズがされると、他の人がまた戻したりして、カスタマイズ合戦が起こったり‥‥。
未来が楽しみです。

コムギさん。
電子書籍の貸し出し用の図書館でしょうか。それもいいですねえ。i美人司書あるいはi図書委員のいる電子図書館。ロマンです。
それはそうと、イケメン店長さん、ガッカリでしたね‥‥。お店を教えたら、そこで買ったものを、
「これをキミに‥‥」
という一発逆転はないのでしょうか‥‥。
Posted by 清太郎 at 2010年07月11日 15:52
いつもの力技で、文学少女戦士イワナミ5シマイが復活する展開になりそうな文学少女シリーズ…ベタだけどアカネちゃん、マシロちゃんのバトルが楽しみです。
Posted by 銀河旋風児 at 2010年07月13日 16:55
銀河旋風児さん。
電子書籍販売の○○書店のサイトに行くと、岩波5姉妹に会える! キミも電子書籍を買って、彼女たちを攻略しよう! ということにもなったりして。いろいろと楽しみが広がりそうです。
Posted by 清太郎 at 2010年07月13日 23:15
本読みHPから数年来の清太郎様のファンですが初めて書き込ませていただきます。どなたも触れられていないようですが、iPhoneアプリで「朗読少女」などという朗読ソフトが出るそうです。「本を1冊読み終わるとイベントが発生したり、少女の反応が変化したりするシステムを採用している。アイテムを追加購入することで背景や衣装を変更できる。」など清太郎様のアイデア丸パクリ(?)のシステムではありませんか。
黒髪・おさげ・眼鏡っ娘でないのがちょっとだけ残念ですが、非常に興味があります。ちなみにiphoneもiPadも持っていないのですが……
Posted by 花丸 at 2010年07月19日 20:26
花丸さん。
コメントありがとうございます。
「朗読少女」は私も注目してます。ようやくこういうものがでてきたか‥‥、という感じ。でも声優さんがいまひとつマイナーっぽいし、女の子の絵もなんかちょっと微妙。せっかくなんだから、安くあげようとせずに、もっと本気になってほしかった。
とりあえず、太宰治「女生徒」が出るのを期待しましょう。
Posted by 清太郎 at 2010年07月19日 22:40
岩波5姉妹の攻略本は岩波で!と言うことになり、
設定画付きとなればまた売り上げアップへ繋がりますね。
Posted by the at 2010年12月07日 10:16
theさん。
岩波書店のオリジナル電子書籍ストアで、岩波5姉妹が日替わりで店員さん‥‥、とかいうのもいいですね。
これだけ電子書籍店が出揃ってきたんだから、そろそろ色物が出てきてもいいのに‥‥。
Posted by 清太郎 at 2010年12月14日 23:24
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