2010年04月17日

[本]るり姉(椰月美智子)

久しぶりの本の紹介でもします。
そういえば今年になって初めてです‥‥。



「るり姉」といっても、
《お姉さんじゃなくて、本当は叔母さん。お母さんの妹》
です。
《あたしがちいちゃい頃からいつだって、記憶のどこかに必ず登場する、大人と子供の中間のひと。》
るり姉は、あたしたちの書いたものや作ったものを大事にとっておいてくれるし、高校の入学祝いには図書カード三万円分くれるし、シーズーのアニーを見るたびに「悲しげアニー」と言うし、妹のみやこが中学生になったとたん髪を真っ赤にしたら「中学生っていうのは、ほんとばかだね」と言うし、いちご狩りセンターにはチューブのコンデンスミルクを持参して誰よりもたくさんいちごを食べるし、もう、大好き!
そのるり姉が、検査入院とかいって、でも別に心配なさそうだから病院でUNOしたりしたんだけど、なんかいつの間にか笑い事じゃなくなっていて、次にお見舞いに行ったらすっかり痩せて顔もひと回り小さくなってて、えっ、ちょっと、そんな、えっ!?

というのが、姪視点の第一章「さつき――夏」。
続く第二章は、さつきのお母さんでるり姉の姉、精神科の看護婦さんでいつもズボンのチャック全開でこの年にして隠れオタクのけい子視点。でも、第一章よりちょっと前の話「けい子――その春」。
第三章は、中学になっていきなりヤンキーになったけどけっこう素直でもう本当にるり姉のことが大好きな次女の視点で「みやこ――去年の冬」。第四章は、るり姉の新しいオットでカイカイと呼ばれてる開人の「開人――去年の秋」。
と、だんだん時間がさかのぼり、将来あんなことになるなんて思いもしないキラキラした日々が、もうせつないったらないの!
で、しかも最後の第五章は、20ページ余りの短い章で、はじめ小学生だった三女視点の「みのり――四年後 春」。えっ、なんでいきなり四年後なのよ!? でもって、わー、それはずるいよー、泣いちゃうじゃないのよー。

という、その展開と手法はありがちなんだけど、いやあ、このるり姉の造形が、いいんですわー。
なんだかキャラっぽくて、わざとらしい。という気もするけど、いや、でも、でも、ピュアな男子のハートをキュンキュンさせること間違いなし。
その魅力が爆発全開するのは、開人視点の第四章。なにしろ開人は合コンで年上のるり姉にビビッとひと目惚れ(《実際にビビッて音がした》)してるのだから、その描写の甘さたるや。
るりちゃんは、さびしいときは犬みたいにまとわりついてきて、でもふだんは猫みたいで、うれしいときは涙をぽろぽろ流して、「悲しみごっこ」を考案して(《「悲しみごっこ」というのは、二人で前後になって手をつなぎ、うなだれながら『昭和枯れすすき』などを口ずさみ、電気を消して廊下をとぼとぼ歩く、という遊び)》、結婚記念日の一泊旅行にはイラストまで描いた「しおり」をつくって、高速に乗ったら窓を全開にして外に向かって歌って、中学のときに音楽の授業でつくった曲をまだ覚えてて歌ってくれて、《るりちゃんの頭の中は、タイムマシンのように時間が自由自在だ。》
結婚前、《るりちゃんからメールが来ると、俺の気持ちはすうっと現実から少しだけ離れて、十五センチくらい宙に浮く気がした》というそのメールは宝物だからぜんぶ保存してあって、《読み返すと、不思議と小学五年生の自分と出会えた》。
メールの内容は、たとえば、
《――カマキリのお腹から細長い寄生虫が出てきたのを発見! 写メ送ります。
 バイクに踏まれたカマキリと、そいつの腹から飛び出た寄生虫。十連発の写メが来て、それを真剣に撮っているるりちゃんを想像しただけで、おかしくなった。》
でもって、るりちゃんは、《俺の大好きな》すけすけの黒ストッキングは穿いてくれなくて、パンティも《いっつも綿のダサいやつ》で、朝お弁当をつくってもらって出かけるとき、ぎゅうっと抱きしめると、《Tシャツはるりちゃんの寝汗の匂いがして、今すぐにベッドに戻りたい衝動に駆られるけど、ノーブラのるりちゃんへのいたずら心のほうが勝って、ちょいと手を出してみると、あと十センチというところで鋭い一撃がやってくる。るりちゃんは思いの外反射神経がいい。
「すんません、行ってきます……」》
という俺の毎日は幸せすぎて、いや、でも、
《――幸せじゃなくていいです。どうか、普通でいられますように。》
なんて開人が神妙に思ったりすると、次の夏には、あんなことになっちゃうのに! ああっ! もうっ! と読者としては何というか「志村、後ろ後ろ!」的な気分になっちゃったりするんだけど、そんなわけで開人の目を(そしてさつきやけい子やみやこの目を)通したるり姉の姿を見ていると、
「人生の伴侶とするなら、こんな女子がいいです。今まで僕は間違ってました。年下でかわいい系でおっぱいが大きくてちょっとエッチな感じの女子がいいと思ってましたが、必ずしもそうではないことがわかりました。るり姉みたいな女子だったら、年上でも、バツイチでも、おっぱいがちっちゃくても、いいです」
という草食系男子がいっぱい名乗り出てくるかもしれませんが、念のため、言っておきます。

こんな女子、いません!!


【こんな人におすすめ】
・理想の女子を探し求めている夢見る男子
・ガテン系のピュアな年下男子が好きな女子
・「ガンダムSEED DESTINY」のメイリンと「鋼の錬金術師」のホークアイ中尉のコスプレをする女子が出てくるような小説を読みたいかた


posted by 清太郎 at 09:15| Comment(3) | TrackBack(1) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
「るり姉」紹介を読んで、たまらず図書館で借りてきたのですが、まさかるりちゃんがあんなことになるとは予想だにしませんでした!騙されました!

そして【こんな人におすすめ】のラストの一項はピンポイント過ぎマス。
Posted by serina at 2010年06月07日 13:20
serinaさん。
そうでしょ! まさかあんなことになるなんて! やっぱり時代かなあ。みんなこういうのを求めてるのかなあ。と思いました。
個人的には、オタク母がありそうでないキャラなので、わりとツボでした。
Posted by 清太郎 at 2010年06月07日 23:09
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
Posted by 藍色 at 2011年01月13日 01:29
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/146765725

この記事へのトラックバック

「るり姉」椰月美智子
Excerpt: 今この瞬間が、こうして過ごす毎日が、奇跡なのかもしれない。幸せのそばには、いつも彼女がいた─。三姉妹が慕う、母親の妹は天真爛漫で感激屋。周りの人々を楽しい気分にさせてくれる天才だ。だが、そんな彼.....
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2011-01-13 01:06
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。