2010年03月13日

書店員は本を薦められるのか?

八百屋さんは、野菜を薦められる。
「奥さん、今日は、いい大根、入ってますよ!」
と言える。
魚屋さんも、魚を薦められる。
「今日の夕ごはん、煮魚にでもしようと思うんだけど、何かない?」
といわれたら、
「奥さん、それなら今日はメバルがお得だよ」
とか何とか、薦められる。
これらに対して、われらが書店員さんは、どうか。
ちゃんと本を薦められるだろうか?
‥‥とあらためて考えると、よくわからない。

おそらく、ふつうにデキる書店員さんなら、たとえば、
「最近出た本で、売れてる本は何ですか?」
と聞かれれば、即答できるでしょう。
売れてる本や、雑誌や新聞の書評で絶賛されているような本を薦めることはできるでしょう。
あるいは、マニアックなお客さん、たとえば、
「天然系の美人おねえさんとツンデレ妹が大活躍するような小説を読みたいんだけど」
なんていうのに対して、
「それでしたら、こちらなどはいかがでしょうか」
とオススメすることもできるはずです。

でも質問の内容が、たとえば、
「甥(あるいは、いとこ)が高校に合格したから、お祝いに本を1冊あげたいんだけど、何かオススメの本ありますか?」
だとしたら、どうか。
こういうときに、
「有川浩とか、どっすかー。若い子に人気っすよー」
なんていう人がいたら、それはぜんぜんわかっていない店員だと思うし、あるいは、
「『アルジャーノンに花束を』とか、いっすよー」
というのも、いかにもマニュアル通り(しかもちょっと古い)のようで、つまらない気がする。
っていうか、その程度の本しか薦めてもらえないような本屋さんで買うなら、amazonで買ってもあまり違いはない気がします。
(ちなみに、私だったら、とりあえず西村佳哲『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)を薦めておきます。)

その内容についての賛否はさておき「いじめから守る45冊」の棚をつくっている、くすみ書房という本屋さんがありますが(このブログでも以前ネタにしました)、この本屋さんが選んだ45冊をほかの書店でもセット販売したとかで、な、なんという気概のなさ。そこはふつう、
「あそこの本屋が45冊だけど、うちは50冊だぜ」
「うちは、いじめられたときに読む100冊」
「うちは、いじめっ子に復讐する666冊」
と競うべきでしょう。
本はこんなにいっぱいあるんだから、少し工夫すれば、もっといろいろ発信できるはずです。
まあ年に8万点も出版物が出るわけで、それをさばくだけで手いっぱい、ということなのかもしれないけど、でもねえ、「本が売れない」と嘆いてばかりいないで、やるべきことをやろうよ、と思います。

と、珍しくこんなふうにからむのも、行きつけの本屋さんに、
西村佳哲『自分をいかして生きる』(バジリコ)
    『自分の仕事を考える3日間』(弘文堂)
がなかったから。
えーっ、なんだよー、おかげで、どちらも去年出た本だっていうのに、つい先日まで、知らなかったじゃんかよー。んーもう、どうしてくれるんだよー。ちょっとアンタんとこ、ちゃんと本見て仕入れてるの? どうなの? ホントにプロなの? 本見る目があるの? エッ!?
という愚痴でした。すんません。

まあでも、電子書籍が本格的に始動しそうな昨今、「自分の目で見て、仕入れて、売る」という小売店であれば当たり前のことをしない本屋さんは、どんどんいらなくなっていっちゃう気がします。流通のしくみがなかなかそれを許さない、という事情もあるけれど、もうちょっと本屋さんにはがんばってほしいなあ。なんだかんだいって、私にとって本屋さんは、1冊の本と初めて出会う場所なのだから。


posted by 清太郎 at 19:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ネットで買うのと違って、本屋の魅力は、やはり、いろんな本がどばーっと広がっているところですね。
本好きにしてみれば、「本がいっぱい!」というだけで、いい風景に見えてしまうし、ネットと違って、探している本とは違う分野の本まで目に入ってしまうので、思いがけない発見があったり、新たな領域に関心が湧いたりする、そんな場でもありますな。
そこで、本をどう見せるか、並べるか、というところに焦点をあてたい。
まず、客は、にじり口から入る。そして、わびたたたずまいの書店全体を鑑賞する。やがて目は、床の間の掛け軸「簿記3級」へと向き、花生けの「富士日記」に思わず見とれる。炉は「JTB時刻表」に切ってあり、やがて主人がその日とっておきの一冊を持って、入ってくる。
これを「書席」と呼び、本を紹介するのを「書をたてる」と言います。
Posted by すずめの巣 at 2010年03月15日 23:27
すずめの巣さん。
おー、いいですねえ! その視点はなかった。
「こ、この本棚は、一本の木から削りだされたものではないですか!」
という贅を凝らした空間なのですね。
このストイックな空間の中で、書店主と客は一対一で相対し、本を媒介として切り結ぶ‥‥。いいですねえ、でも、お金にならない‥‥。
Posted by 清太郎 at 2010年03月16日 22:15
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