2009年12月13日

今年読んだ本から(2009)

えー、師走だから忙しい、というわけではないんですが、例の通り更新が停滞しております。申し訳ない。
そろそろまた読書界番付とか考えないといけない時期ではありますが、ひと言で言えば、今年もやっぱり、出版界にとってはわりと残念な一年でした。はー。
ということも含め、いろいろと考えることもあって、やっぱりおもしろかった本は、「おもしろかった!」と、小さな声でいいから発信しておくべきなんじゃないか、と最近思うようになりました。
と、そんなわけで、「今年おもしろかった本」。
本に関するブログでありながら、「今年のベスト」とか何とかそういう年末スペシャル企画をこれまでやったことがありませんでしたので、一見すごく月並みな企画に見えて、このブログとしてはわりと思い切った企画です。
ただ、ベスト10とか20とか、順位付けしようとすると、えー、えー、どうしよう、えーい、もう、みんなが一等賞! とか何とかめんどくさいことになりそうなので、印象に残った本を思いつくままに挙げていきます。対象は、2008〜2009年出版の書籍とします。

ということで、第一位は‥‥。
って、順位付けしないんじゃなかったのかい!
といわれそうですが、でも実際、ホントによかったのが、これ。

フィリップ・クローデル『ブロデックの報告書』みすず書房、2009

村人たちによる余所者の集団殺人について記録することを命じられた僕、ブロデックは‥‥。ナチスと強制収容所、共同体と差別、記録と記憶、さまざまなテーマを織り交ぜつつ、あくまで硬質に澄んだ文章で、静かに進む物語。○○が××されるシーンなんて、嫌なんだけどでももう息を呑む美しさだったりして、年のはじめに読んで、ああ、これが今年のベスト小説かも、と思っていたら、結局そうだった気がします。たまりません。



あとは、順不同で。

ジュンパ・ラヒリ『見知らぬ場所』新潮社クレストブックス、2008

発行は2008年ですが、こちらもたまらん短編集。とくに、表題作。“コミュニケーションの果ての断絶、ディスコミュニケーションの果ての希望”というラヒリお得意のテーマで正面からの直球勝負。なんかもう、間然するところなし! といった感じ(まあ、まとまりすぎかもしれないけど)の一品でした。



瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』理論社、2009

えーと、これは、「青春100連発」なんていうタイトルを見て、エー、ホントかよー、シンプル癒し系の瀬尾まいこのくせに、何が100連発だよ、大げさだなー、と思ったら、ホントに100連発(以上)だったのでビックリした作品。
冒頭から数えていくと、
1発目:片思いの女の子・岡野さんと下校
2発目:でも、岡野さんが好きなのは、自分の兄
3発目:彼女から、その兄へのラブレターの代筆をしてくれと頼まれる
4発目:なんで代筆かっていうと、「的を射た言葉で書いてあれば、こいつわかってるやんと思われて、好印象を与えて、岡野さんってちょっとええかもって思われて、ほんで……」と妄想を勝手にふくらませる
5発目:でも兄は卒業したら東京に行くからもう会えない。「ええの。会えなくたって私の気持ちさえ伝われば」
ここまででまだ4ページ目。全部で320ページあるから、この割合だと、400連発まであることになります。すごい。



伊沢正名『くう・ねる・のぐそ』山と渓谷社、2009

 野糞を始めて35年、21世紀に入って一度もトイレでウンコをしていない、という著者のノグソの記録(袋とじ付き)。なんていうと、ビミョーなサブカル本に見えるけど、著者は菌類写真家だったりもして、そのノグソには科学と信念の裏づけがあるから、けっこう納得。決してベストセラーになりえない内容だけど、こういう本はちゃんと読まれてほしい。



今野浩『すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇』新潮社、2009


金融工学の第一人者である今野が、将来を嘱望されながら若くして死んだ弟子・白川浩(東工大モーレツ天才助教授)との出会いからその最期までを描く。白川浩、誰かに似てると思ってたら、羽海野チカ『3月のライオン』に出てくる二海堂くんでした。



吉田重人・岡ノ谷一夫『ハダカデバネズミ』岩波書店、2008

ハダカデバネズミの社会には、自ら肉布団となって下に敷かれることを仕事にしている「ふとん係」がいます。



アダム・リース・ゴウルナー『フルーツ・ハンター―果物をめぐる冒険とビジネス』白水社、2009


オオミヤシ(coco de mer)という植物の実が、女性のおしり(とその周辺)にそっくり! というので、思わずGoogleで画像検索してしまいました。たしかにおしり(とその周辺)にそっくりでした。



長嶋有『ねたあとに』朝日新聞出版、2009

作中に出てくるオリジナルゲームが楽しそう。「ケイバ」とか「ダジャレしりとり」とか。いちばん気になるのは「顔」。少年時代のロクローとヒキオ君がつくったもので、名前、年齢、生まれなどの細かな項目をさいころで決めていって人物像をつくりあげる。レトロなディテールと、微妙なセンスが素敵です。王冠コレクター、困ると相手を殴る、顔に膏薬を貼ってる、鼻がお茶の水博士‥‥。



寄藤文平『元素生活』化学同人、2009

ハロゲン族はハゲで、希ガスはアフロ、と元素をキャラクター化すれば覚えやすいしわかりやすい。という発想に脱帽。
化学同人って、最近わりと楽しみな出版社です。



きしわだ自然友の会『チリモン博物誌』幻戯書房、2009

ちりめんじゃこに入ってるちっちゃいタコやらカニやら他の魚やらを全部集めてみました! ちりめんじゃこって、日本全国どこでも同じようなもんかと思ってたら、ぜんぜん違うのね。地方ごとにかなり違うみたい。本書に出てくるのは、大阪のちりめんじゃこ。関西出身ならもっと楽しめたと思う。



芹沢一也・荻上チキ(編)『経済成長って何で必要なんだろう?』光文社、2009

リーマンショックのせいで失業者になりかけたので、今年はこの手の本がけっこう切実に心に響きました。雨宮処凛・飯田泰之『脱貧困の経済学』とか、阿部真大『ハタチの原点―仕事、恋愛、家族のこれから』とか、メアリー・C・ブリントン『失われた場を探して―ロストジェネレーションの社会学』とか。



藤野千夜『親子三代、犬一匹』朝日新聞出版、2009

親子三代よりも、むしろ犬小説。登場人物のひとり夕樹は、飼い犬のトビ丸(♀)に対して「かわいーね、トビ丸、まじ可愛い、トビ可愛い」と言ってますが、うちでもグスタフに対して「グスタフ、まじ可愛い、グス可愛い」と言ってます。



アラン・ベネット『やんごとなき読者』白水社、2009

エリザベス女王がもし女王に夢中になったら‥‥、という読書小説。本、読みたくなります。気になるのは、BBCで働いていたゲイのJ・R・アカーリー『僕の犬チューリップ』と、19世紀の牧師で小さい女の子が好きな(ただし、ルイス・キャロルよりもっとひどかった)キルヴァートの日記。



千野帽子『読まず嫌い。』角川書店、2009

いわゆる「名作」の読み方に搦め手から光を当ててくれて、これも本読みたくなる本。特に気になるのは、シュピッテラー『少女嫌ひ』。100年前の作品なのに、ロリ&ツンデレ&ミリタリーコスという現代のマニアの萌えツボを突きまくるゲジーマたんに悶絶。



管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』左右社、2009

こちらも本が読みたくなる本。詩的な表現に、うっとりです。「本を買うことは、たとえばタンポポの綿毛を吹いて風に飛ばすことにも似ている。この行為には陽光があり、遠い青空や地平線がある。心を外に連れ出してくれる動きがある」とか。これに出てきた宮本常一『民俗学の旅』、早速読んでみたら、おもしろすぎて、たまげた。



梨木香歩『f植物園の巣穴』朝日新聞出版、2009

『ゾッド・ワロップ』(ウィリアム・B・スペンサー、角川書店、2000)の味わい。



エルサ・モランテ『アンダルシアの肩かけ』河出書房新社、2009

短編集。モランテは初読みでしたが、なんというかソログープっぽい幻想的作品がいい感じ。表題作もたまらんけどね。



綾辻行人『Another』角川書店、2009

こ、ここは第三新東京市ですか!? というくらい、キャラがみんなエヴァ。



と、ほかにもいろいろおもしろい本を読んだような気がするけど、そろそろ飽きてきたので、このへんで。(腰くだけ。)
それにしても、こうして振り返ってみると、今年はわりとヌルめの本ばかり読んでた気がする。からだが無意識に癒しを求めているのかしら‥‥。


posted by 清太郎 at 23:11| Comment(3) | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「印象に残った本」というくくりが、なんとも清太郎さんらしい「今年読んだ本のまとめ」でした。ご苦労様です。

それにしても手広く読まれているなあ。挙がっている本、ほとんど知らないものばかりだったりします。というか、『くう・ねる・のぐそ』なんかは、一度聞いたら忘れられないインパクトのタイトルですね(笑)。

私もこれから読みたい本として、参考にさせていただきます。
Posted by 八方美人男 at 2009年12月15日 08:36
こんにちは。
見事に知らない本ばかり。いや、2冊は読んでるのがありました。

元素生活、ハダカデバネズミ は、私も気になるところで、読んでみたーいと思います。
ハダカデバネズミ、上野動物園で見ましたよ。デバデバ。
他のも清太郎さんが紹介してると面白そうです。参考にさせていただきます。

私は。。。なんだろうなあ、今年読んだ本で、って。すぐに思いつかないあたり、なんかダメっぽい気がします。年末か年始に振り返ってみますー。
Posted by シキ at 2009年12月15日 10:19
八方美人男さん。
『くう・ねる・のぐそ』はすごいです。いろんな意味で。思わず感化されてしまいそうになります。エコブームなんだし、こういう本気のエコがもっと流行れば楽しいのに。(まあ、ノグソブームなんてのが来たら嫌だけど。)

シキさん。
『ハダカデバネズミ』はホントになかなかいい本。べつやくれいのイラストでヘンな楽しさに満ちてますが、知的な発見もいっぱいあります。
しかし全体的に見て、今年はどっちかというと不作の年だった気がします‥‥。
Posted by 清太郎 at 2009年12月16日 22:10
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