「魔法+科学」
のファンタジーというと、
「魔法の世界に科学を持ち込んだ(あるいはその逆)」
といった、たとえば「ドラえもん のび太の魔界大冒険」のような設定か、あるいは、
「魔法と科学のキメラ的世界」
といった感じの、まあRPGでよくあるような設定(剣や弓と並んで、銃などの火器が売ってるとか)がありがちです。
が、いずれにしたところで、こうしたファンタジーの文脈で用いられている「科学」とは、自然科学というより応用科学、それも機械工学の分野に偏っているような気がします。
科学の裾野ははるかに広大です。物理学も生物学も天文学も科学。
だから、「魔法+科学」のファンタジーには、もっとバラエティがあっていいはずです。
なのに、機械工学以外の科学と魔法の組み合わせ、といわれると‥‥、うーん、何かあったっけ。今パッと思いつくのは、ファンタジーじゃないけど(っていうか小説でもないけど)、山本義隆「磁力と重力の発見」(みすず書房)くらい。(離れたところにある物体に作用する磁力や重力は、当初はむしろ魔術的なものだったのです。)
つまり、従来の「魔法+科学」系ファンタジーは、その点において公正を欠いていたといわざるを得ないのです。
まあ、だからといって、安直に魔法と科学をくっつければいいというものではないかもしれません。たとえば、数学と魔法を融合した痛快数学ファンタジー、
「フェルマーの最終定理を魔法で解決! テケレッツノパーで、ほら、あっという間に証明終わり〜!」
ということになったら、これ以上物語を広げるのは困難です。
では、機械工学以外なら一体どんな分野で魔法ファンタジーが可能なのか。
ということでいろいろ考えたのですが(というか、最近、今野浩「すべて僕に任せてください!―東工大モーレツ助教授の悲劇」を読んだので思いついたネタなんだけど)、とりあえず「金融工学」ではどうか。「工学」というけど、まあ応用数学です。これを魔法とうまく組み合わせられないか。
ということで‥‥。
19歳のマイケルは、マサチューセッツ工科大学の学生にして、金融工学の天才。ある日彼は交通事故に巻き込まれ‥‥、たと思ったら、ふと気がつくとなぜか魔法が支配する異世界にいるのだった(いい加減な設定です)。
途方にくれたマイケルを保護してくれたのは、大手証券会社を営むモブソン家だった。魔法の世界にも、証券会社も金融もあるのだ。
おお、証券会社、これなら自分にも手伝いができる、と喜んだマイケルだが、しかし‥‥。
「ちょ、ちょっと、こんなデリバティブ、ありえないでしょ!!」
リスクも信用も確率も魔法でコントロールできるこの世界では、マイケルの常識は通用しなかった。
いや、それどころか、よく見るとお店で売ってる商品は、値段がバラバラ。
「ちょ、ちょっと、需要と供給の関係は、どうなってんの!!」
混乱するマイケルに対して、モブソン氏の娘メアリは、こともなげに言う。
「需要と供給? 何おかしなこと言ってるの。供給が多すぎれば神様が買ってくれるし、少なすぎれば神様が売ってくれるに決まってるじゃない」
ああ、なんと、この世界の市場を支配するのは、「神の見えざる手」ではなくて、
「神の見える手」
だったのだ!
などといってるうちに、その神様の介入によって、モブソン家は倒産の危機に!
恩義のあるモブソン氏のため、そして美しいメアリのために、マイケルは立ち上がった!
魔法が幅を利かせる世界で、頼みのコンピュータもなし、しかも相手は神様。この三重苦に対して、マイケルの武器は、最先端の金融工学理論、そしてフィナンシャルエンジニアとしての超人的な頭脳のみ。
マイケルは果たしてモブソン家の危機を救えるのか!?
現代金融工学は魔法に打ち勝てるのか!?
全能の神様を出し抜くことができるのか!?
そしてマイケルの恋の行方は!?
すべてが終わったとき、マイケルが選んだ道とは!?
‥‥という感じで、それなりに物語になりそうなんだけど、しかしリーマンショック以前ならともかく、金融工学悪玉論が横行する今では、あんまり売れそうにないよね‥‥。
この案、ダメでした。
2009年08月02日
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なにはともあれ、その世界の神、なんかヤダ。酷そう〜。
私もよくわからないのですが、まあなんとなく、それっぽく‥‥。
でもこういうの、「マンガで読む○○」みたいな感じで、うまくまとめることができれば、毛色の変わった入門書になるかも、と思いますが、どうかな‥‥?
あ、ファンタジー+数学で、こういうのはどうでしょう?
「博士を愛した数式」
数字だけは裏切らない・・・人間嫌いの博士が唯一愛しているものは数字。数字達もまた博士の愛に数式はすべてを裏切らないという不滅の愛で応えていた。
静かで安穏とした博士と数字達の対話の日々。特に活躍していたのが素数1・2・3。
しかし、彼らにはれっきとしたペアの9・8・7がいた。次第に孤独感を募らせる5。
寂しさは愛情の裏返し。「博士にワタシだけ、見てほしい・・・」
恋心を抑えきれない5はとうとう禁断の魔女ZEROの元へ・・・そして告げられる
「ここから先はマイナスの世界。おまえは素数を捨てることになるがそれでもいいのか!?」
自分が急にいなくなれば博士はきっと探しに来てくれる・・・そう信じた彼女はうなずいた・・
その時、ルートが駆け込んできた「待って!」しかし時すでに遅し、すでに彼女はマイナスの世界へ。ルートが飛び込もうとすると、魔女が「マテ!お前がマイナスの世界に行けば、世界が複素数平面になり大混乱に陥るぞ!」しかし迷わず飛び込むルート!
「博士、後は頼んだ!!」
二人の純粋なiが実る時は来るのか!!?
・・・黄黒様の数字の擬人化、こんなファンタジーはいかがでしょうか・・・
それ、すごい! いい! 爆笑(^^)
たしかに、ルートがマイナスの世界に行っちゃうと大混乱になりそう。iはそこで見つかるのか。気になるところです。
むしろ博士はもうどうでもよくて、ルートの大冒険だけでいいかもしれないですね。
こんな感じの物語を、いつも妄想してます!
正確に言うと、「こういう小説ないかなぁ」っていつも思ってます。
魔法世界に迷い込んだ科学者が、あくまで科学の力で魔法を倒すとか、魔法を科学的に解明して「魔法科学」を確立するとか、そんなストーリーの小説ないですかね。
ラノベ『とある魔術の禁書目録』が、
「超能力を科学で解明した世界に育った主人公が、ある日魔術の世界の女の子と出会い、次第に魔術世界の闘争に巻き込まれていく…」
と言うストーリーだと聞き、てっきり「主人公が科学の力で魔術を倒すんだな!?」と思って期待しましたが、ちょっと的外れでした(思いっきり超能力で魔術を倒してた)。
まあ、話自体は面白かったので満足しましたが。
コムギさん。
す、すごい。そこまで考えたことなかったです。
なるほど、ルートは禁断の負の世界に飛び込むのですね。
そしてそこで待ち受けるのは、歪な複素関数の世界。
「真っ直ぐ進んでいたはずなのに、また同じ場所だ!」
「そうか、この関数は円円対応なんだ! もっと早く気付くべきだった…っ!」
とか、わけのわからない会話をしそうです。
おお、黄黒さんのツボはこのあたりでしたか。私もこういう感じの話は好きですが、でも具体的に何かというと、えーと、あるようなないような、なんだっけ。
魔法は出てこないですが、デイヴィッド・ブリンの『プラクティス・エフェクト』(ハヤカワSF文庫)はけっこうおすすめです。
主人公がいきなり行っちゃった世界は、なんと摩擦係数ゼロだった! というもの。このアイデアひとつで最後まで突っ走る、ある意味SFらしい小説なんですが、ストーリーは、囚われのお姫様を救い出す王道ラノベ展開です。
でもちょっと変わったジャンル(金融小説?)という点で面白かったです
金融小説は、それなりにジャンルとして確立してますよね。よくわかんないけど、わりとドラマ性に富んでそうな世界だし。
たぶん、今の若い子がオジサンになった頃に(そしてその時代にまだ読書がそれなりのメジャーな趣味であった場合に)、そのあたりの読者層に向けて、萌え要素満載の金融ラブコメとかがいっぱい出てくると思います。