2009年04月15日

活字離れ反対デモ

活字離れ、本離れと、さんざんいわれていますが、そう主張している業界の人の声がいまひとつ本気に聞こえない理由のひとつが、
「デモをしてない」
ということだと思います。
本当に真剣に人々の活字離れを憂い、このままでは本業界は危うい、いや、それどころか日本の将来も危ういのだ、日本の未来のために活字離れを断固阻止せねばならぬ、今こそ立ち上がるときだ、俺がやれねば誰がやる!
などと本気に思っているなら、
「国民よ、本を読め!」
「活字離れ、ハンターイ!」
と、威勢よくデモのひとつやふたつ、やってもいいのではないか。
ほら、北方領土とか米軍基地移転とか、よくわかんないけど、ときどきデモをしてますよね。ああいうのを見ると、まあその主張の当否はさておき、
「おつかれさん」
くらいは思うわけです。
それに対して、いかにネット上で、あるいは新聞・雑誌の誌上で「活字離れを憂う!」なんて書いてあったところで、そんなこといって、どうせ空調のきいた部屋の中でぬくぬくしながら書いてるんでしょ、などとその切迫感、差し迫った感は一向に伝わってこない。
デモ行進やってる人は、炎天下、あるいは寒風吹きすさぶ中、自分の足で歩いて、主張しているではないか、真に活字離れを憂いているのなら、自分の体を張ってみろ!と、思ったりもするのです。

「でも、そうは言っても、そんなデモなんてできるの?」
と思うかもしれないけど、いちおう日本国民の権利のようだし、その気になりさえすれば、実はわりとかんたんにデモはできる。
ということが、松本哉『貧乏人の逆襲』(筑摩書房)に書いてあります。これによると、デモだからって、いっぱい人集めて行列にする必要なんて全然ない、
「3人デモ」
でいい、というから(3人だけのデモでも、ちゃんと警察官が交通整理などしながら先導してくれる。おまわりさんに感謝しましょう)、飲みの席などで、
「よーし、デモするぞー!」
「おー、俺も行く行く」
「俺も俺も」
などと言質をとってしまえば、あっという間にメンバーはそろう。
そうして、
「活字離れ反対!」
「本離れを断固阻止せよ」
「本読まぬ輩を糾弾せよ」
などと書いたプラカードを高々と掲げ、あるいは垂れ幕をびらびら垂らし、拡声器を手に、
「活字離れハンターイ!」
「ハンターイ!」
「国民よ、本を読めー!」
「本を読めー!」
「本を読まないと、バカになるぞー!」
「バカになるぞー!」
と威風堂々、デモ行進を行うのです。

「で、それに何の意味があるの?」
と思う人がいるかもしれませんが、いや、あなた、これは単なるきっかけにしかすぎないのですよ。
だって、衰えたりとはいえど、世の中の巨大メディアの一角は、新聞と雑誌。彼らも、活字離れを危惧していることには変わりない、つまり同じ穴のムジナなんです。
たとえ参加者が3人だろうと、ひとたび活字離れ反対デモを行えば、新聞では、
「活字離れ反対デモ開催!」
と社会面でデカデカと、雑誌なら、
「時代は今、活字離れ反対デモ!」
などと緊急特集を組む勢いで、記事になること間違いなし。
すると、それを読んだ、何も知らない地方の書店経営者の団塊世代などが色めき立ち、
「昔取った杵柄、デモ行進なら、まかせとけ!」
とばかりに、ヘルメットと角棒を片手に立ち上がり、にわかに全国各地で活字離れ反対デモが勃発、志ある者がわれもわれもとデモ隊に身を投じ、その勢いはさながら燎原の火のごとく、もはや誰にも止められはせぬ。さらに情勢を察したレコード店あたりが、これに乗じて、
「CD離れ反対! 音楽ダウンロードなんかしてないでCDで聴けデモ」
などを組織し、テレビ業界も、
「テレビ離れ反対デモ」
を、クルマ業界も、
「クルマ離れ反対デモ」
を、ほかにも、
「若者の相撲離れ反対」
「若者の海外旅行離れ反対」
「学生の理科離れ反対」
「タバコ離れ反対」
「浮世離れ反対」
などなど、各地で多彩なデモが入り乱れ、そのうち活字離れ反対デモとクルマ離れ反対デモが街頭でぶつかったりなんかして、
「本なんか読んでたらクルマ乗れるかー!!」
「クルマ乗ってたら本が読めねーだろ!!」
と激高した双方が乱闘騒ぎを巻き起こして死者多数、などということになっても‥‥、たぶんおおかたの国民は、ケータイでそんなニュースでも見ながら、「ふーん、おつかれさま」など思うだけで、結局のところ活字離れは改善されない気がします。
posted by 清太郎 at 07:03| Comment(5) | TrackBack(1) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うーん、その後、運動が先鋭化していくと、かつての10.21国際反戦デーにならって、読書週間に新宿の紀伊国屋前あたりで大規模な反体制的読書活動を行う学生達とそれを阻止する機動隊の間で、朗読合戦が行われるというような展開になるのではないでしょうか。
賑やかでけっこうであります。
Posted by すずめの巣 at 2009年04月15日 23:23
>すると、それを読んだ、何も知らない地方の書店経営者の団塊世代などが色めき立ち、
「昔取った杵柄、デモ行進なら、まかせとけ!」
とばかりに、ヘルメットと角棒を片手に立ち上がり、

これすごくありそう〜な気がして笑ったです〜。

>「タバコ離れ反対」
 「浮世離れ反対」

これは反対しなくていい。。。デモ反対。

すずめの巣さんの朗読合戦、すごく面白そうです。
敵が森鴎外でくるなら、こっちは最強ドストエフスキーだ!
とか、
え〜、アタシ、あたし彼女 朗読しちゃう!
とか、バリエーションは無限。。。

まあ結局本を読むのが好き、って人は、外で人前で大声出すなんて無理、って感じの人が多そう。。。な気がするので、デモは難しそう〜です。
Posted by シキ at 2009年04月16日 08:43
すずめの巣さん。
朗読合戦ですか、いいですね、威勢がよくて。
でも機動隊に立ち向かうのは、学生じゃなさそう。かつての学生、でしょうか。
デモ隊も一枚岩じゃなくて、よくわかんないけど各党派に分かれていて、こっちでは司馬遼太郎を朗読、あっちでは負けじと村上春樹を朗読、そっちでは東野圭吾を朗読、どさくさにまぎれて大川隆法を朗読、などということになって‥‥。でも見てる分には、むしろ流血乱闘になったほうが楽しい気もします(^^;

シキさん。
新刊書店の店主よりも、古本屋の店主に多いような気もしますね、
「いまだ俺の体の中には、あの頃の情熱が、埋み火のように、静かに燃え続けているんだぜ‥‥」
という人。「アジ演説なら、まかせとけ!」なんて、頼んでもいないのにデモの先頭に立ってくれそうです。でも、乱闘になると、弱いかな‥‥。
タバコ離れ反対デモも、あればそれなりに楽しそうですよ。遠くの方にもくもくと白煙が立ち上っているのが見え、それがだんだん近づいてきて、何だ何だ!と思っていると、全員もくもくとタバコふかしながら行列をつくってるデモ隊だったりするの。タバコ反対デモとぶつかって乱闘してほしい。
Posted by 清太郎 at 2009年04月16日 11:25
朗読合戦は面白そうですねぇ。
「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった」と朗読してる相手に、「灼熱の陽光が私を射した」なんて読み返すの(こんな一文が出てくる小説があるかどうか知らんけど
で、合戦が盛り上がって学生がやや有理に思えたところで、「盛者必衰の理をあらわす」なんて読み上げて意気消沈させるの。
マスコミが大勢やってきてテレビの生中継が始まったところで、官能小説を大声で読み上げて状況を悪化させたり。

見た目的には、魔法書片手に魔法対決してるっぽくてカッコイイかも知れません。
Posted by 黄黒真直 at 2009年04月19日 00:02
黄黒さん。
おお、単に朗読するだけじゃなくて、戦略があるわけですね。いかにも「合戦」だ。
そうなると、相手はたぶんあれを読んでくるから、こちらは裏をかいてあれを用意して、その次はこれを‥‥、といった、さながらトレーディングカードゲームのデッキ構築のような作戦を練る必要がありますね。
あ、そうなると、別にデモじゃなくても、これだけで対戦ゲームができそう。うーむ、おもしろいかも。
Posted by 清太郎 at 2009年04月22日 07:22
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

学校の教科書に載っているような物語を読ませただけで子供の感性が豊かになると語るな
Excerpt: book sale loot / ginnerobot  子供の活字離れが・・・・・・と未だに耳にするが、本当に活字から離れているだろうか? それは潔癖な大人たちが子供らを眺めたとき、学校の教科書に載..
Weblog: materialize.jp
Tracked: 2013-10-29 22:53
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。