2009年01月10日

定額給付金で本を買う

定額給付金問題が迷走していますね。
2兆円もあれば、ひとつのことにドカンと使った方がよほど効果と意義がありそうなものですが、それがなかなかできないところが政治の世界のよくわからないところです。
中止・廃案になる可能性もありますが、実施されることになったら、素直に受け取って(拒否すると、その手続きにまたコストがかかりそう)、景気浮揚のためにパッパと使っちゃうべきかもしれません。

ということで、話題が旬のうちにこの企画。
定額給付金をもらったら、全額、本に使ってはいかがでしょうか。

給付金は、ひとりあたり12,000円。18歳以下、65歳以上は20,000円です。これだけあれば、日ごろはためらうハードカバーの単行本が何冊も買えますぜ。
「でも、いきなり本買えっていわれても、何を買ったら‥‥」
と、迷ってしまう人も、多いことでしょう。
そんなアナタ!
よーし、まかせなさい。その給付金、全額ワタクシにお預けください!
今ならローリスク・ハイリターンで、とっておきの本を斡旋いたしますよ。ゲヒヒ‥‥。

ただ、やみくもに本を紹介するのも芸がないですから、とりあえず紹介する相手は職場の後輩タカナシさんの妹、アズサちゃんということにしてみましょう。
タカナシさん相手に紹介してもいいのですが、20代の彼女に支給される額は12,000円。17歳のアズサちゃん相手なら20,000円まで使えるのですから、そっちのほうが選び甲斐があります。
アズサちゃんは、もう本大好き読書大好き!というほどではありませんが、活字ばかりの本に何の抵抗もない程度には本好きです。
「昨年読んだ本でおもしろかったのは、学校の図書館で借りた『一瞬の風になれ』」
ただし腐女子ではありません。
成績はけっこうよくて、理数系もよくできるけど、いちおう国立文系狙い。髪が長くて色白で、パッチリした目が印象的で、手足が長くてセーラー服(とくに夏服)がよく似合う、そんな女の子、ということにしましょう。

このアズサちゃんに、どんな本をすすめればよいのか。硬すぎず軟らかすぎず、知的で、スッキリした感じで‥‥。
ただし、定額給付金は景気対策のためでもあるのですから、できればマイナー出版社を応援できるようなセレクトをしたいところです。まあ小学館とか講談社とか大手を避けて、中堅出版社以下の本としましょう。
でも、古本じゃないと手に入らないのはダメ。Amazonで買えるような新刊の中から選んでみましょう。
また、写真集や画集の類、それとマンガは除外します。特に理由はないけど。
もちろん、1社につき1作品ずつ。著者も重複しないように、というのは基本ですね。
総額は20,000円。これを1円でも超えたらドボンです。
むふー、こういうの考えるのって、楽しいよね。
ということで、選んだのが、以下の10作品11冊。いかがでしょうか。

「学校をつくろう!――子どもの心がはずむ空間」
工藤和美著 TOTO出版 1,575円
建築家が書いた建築の本。なのに、泣ける! 日本の教育も、まだまだ捨てたものじゃないです。

「バレエダンサー」(上・下)
ルーマ・ゴッデン著 渡辺南都子訳 偕成社 上下各1,890円
バレエに目覚めた天才少年の受難と成功の物語‥‥、と思いきや、その姉の挫折と成長の物語、でもあって、十代のうちに読んでおきたいヤングアダルトの傑作。

「ウィリアム・ブレイクのバット」
平出隆著 幻戯書房 2,940円
詩人のエッセイ集。装丁が、もう頬擦りしたくなるくらいステキ。内容は、草野球および野球一般、空想の国の切手を描いて30歳で焼け死んだドナルド・エヴァンズ、自動車免許取得。

「枕もとに靴――ああ無情の泥酔日記」
北大路公子著 寿郎社 1,575円
哀しいほどに笑えて、ときにしんみり。こんな大人になっちゃいけない見本が、ここにあります。

「中二階」
ニコルソン・ベイカー著 岸本佐知子訳 白水社 998円
中二階のオフィスへつながるエスカレーターに乗ってから降りるまでを描いた、ユーモアたっぷりの超微視的小説。

「クマとナマコと修学旅行――僕と僕らの探検記」
盛口満著 どうぶつ社 1,575円
当代随一の生物学エッセイの書き手による、生き物いっぱい修学旅行。知的好奇心をそそられます。

「象を飼う――中古住宅で暮らす法」
村松伸著 晶文社 1,890円
著名建築家がデザインした著名住宅の中古物件。購入したときには、リビングにキノコが一本生えていた‥‥。ユニークな家住まいエッセイであり、さりげない子育てエッセイでもある。

「野生馬を追う――ウマのフィールド・サイエンス」
木村李花子著 東京大学出版会 2,940円
馬の群れを追って世界各地の原野に身を潜めてきた女性研究者によるフィールドワーク報告。科学者ならではの静謐な観察眼と、歌うがごとく詩的な言葉による表現が、たまりません。

「「忘れられた日本人」の舞台を旅する――宮本常一の軌跡」
木村哲也著 河出書房新社 1,890円
寝袋かついで放浪しながら、反骨の民俗学者・宮本常一の著作「忘れられた日本人」ゆかりの人たちをアポなしで訪れる、という、なんだか「突撃!隣の晩ごはん」的さわやか青春民俗学ルポ。

「日の名残」
カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 早川書房 798円
英国執事の抑制された日常と抑制された愛。失われゆく伝統、かげりゆく光。いぶし銀に光る英国小説らしい英国小説。

で、以上、総額19,961円。
うーむ、見直してみると、日本人の小説が一冊も入ってないし、っていうか3作挙げた小説は全部イギリスの作品だし、10作品中に生物学ものが2冊、建築ものが2冊、という甚だしい偏りぶり。いちおう国立文系志望のアズサちゃんに対して、こんなリストでいいのかしら、と思わないでもないけど、いいのだ、アズサちゃんは理科も得意なんだから(勝手な設定だ)。

「野生馬を追う」のかわりに武田百合子「富士日記」全3巻(中公文庫 計2,940円)にしようか迷ったのだけど、いや、「富士日記」なら、別に今回の給付金を使わずとも、この先の人生でいくらでも出会う機会があるでしょう、ということで見送り。
また、ニコルソン・ベイカーなら「フェルマータ」(白水社 1,155円)もいいのだけれど、超能力で時間を止められる青年が女子の服を脱がしまくるという内容なので、こんなのをすすめたらアズサちゃんから嫌われそうなので断念。同様の理由で、女子トイレのぞき小説「青春と変態」(会田誠著 ABC出版 1,575円)も却下しました。

総額20,000円というのがなかなか難しくて、晶文社では「象を飼う」の代わりに、これこそ学生さんにすすめたい「自分の仕事をつくる」(西村佳哲著 1995円)を入れたかったのだけど、残念ながら20,066円になっちゃう。あるいは「クマとナマコと修学旅行」よりも、本当は「ネコジャラシのポップコーン」(盛口満著 木魂社 1,680円)のほうが発見的で知的におもしろいのだけど、やっぱり20,066円でドボン!
うーむ、総額20,000円は税抜き金額にすればよかった(当初の目的からはずれてます)。

ということで、17歳のアズサちゃんではない読者の皆様にも、定額給付金で本を買う際に、少しは参考になりますでしょうか。
私は、定額給付金もらったら、どうしようかな‥‥。どうせ12,000円だし‥‥。たぶん本なんか1冊も買わずに、おいしいもの食べてパッと使っちゃうと思います。(ダメじゃん)


posted by 清太郎 at 16:03| Comment(13) | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ごめん、もし定額給付金が入るようであれば、新しいスーツを買う足しにしようと決めてます(笑)。というか、一番新しいスーツがもう10年選手というのも問題ありだと思うので・・・。これも不況が悪いんだい。

それはともかく、本のリスト拝見しました。さすがは清太郎さん、よくぞこれだけマイナーな出版社の、それもけっこう面白そうな作品をご存知ですね。『バレエダンサー』と『中二階』などは、定額給付金関係なしに、機会があれば私も読んでみたいと思いました。
Posted by 八方美人男 at 2009年01月10日 19:38
定額給付金。もらえるんでしょうかね、ほんとに。あんまり期待しないでおこうっと。
といいつつ(と、いいつつ?ハリキリスタジアム! by STMB)
やっぱりワタシも考えちゃいました!

と言っても清太郎さんのようにターゲットを決めたり制約を設けたりという技は上級すぎて無理なので、素直に自分が欲しい本リスト。。。

『星 三百六十五夜』(野尻抱影 中公文庫ビブロ)の、秋編を読んで感じ入ったので 
同シリーズ春・夏・冬 を各1冊。計1860円

『諸国物語』(ポプラ社)世界の巨匠たちの名作を、名訳から新訳まで取り揃えて1冊で!
どどんと6,930円

『ひっこしました』(杉浦さやか 祥伝社)大好きなイラストレーターの未読近刊。
1,365円

あと1,845円。。。これがなかなか決められない。
もらえると決まってから改めて考えまする〜。
Posted by のんか at 2009年01月10日 22:50
あんまり真剣に考えたことないけど、よく考えたらタダで12000円もらえるって凄いことですよね。
しかも景気を良くするための物ですから、「貯金する」という選択は論外なわけで。

ボクの場合、本は本でもマンガ本や参考書に全額注ぎ込みそうな…。
参考書って高いですよね。普通に一冊2000円以上しますからね。
12000円なら、買えるのは5冊ぐらいでしょうか。
まあ、半期に受講する必須科目は5つぐらいですから、ちょうどいいかもしれませんが。
(電磁気学、統計力学、量子力学、流体力学、物理数学の5冊?)
Posted by 黄黒真直 at 2009年01月10日 23:19
八方美人男さん。
おお、もうすでに使い道が(^^)
「バレエダンサー」は、児童文学というものをやや蔑視して十代を過ごした後、二十歳を過ぎてからふと読んで、蒙をひらかされました。
「中二階」は、こんな小説もありうるのか!というアクロバティックな妄想小説で、岸本佐知子さんの翻訳もぴったり。
どちらも読んで損はないですよ(^^)

のんかさん。
そうそう、このお金で何が買えるかな‥‥、と考えるだけでも、本読みは楽しくなりますよね。
野尻抱影とは、なかなか渋いですねえ。そういったシリーズものを大人買いする好機かもしれません。ポプラ社の、あの鈍器になりそうな「諸国物語」も、たしかにこんな機会でもなければなかなか買えない本ですよね。
本屋さんでも、「1万2千円で、私ならこれを買います!」と、各店員さんが自分でチョイスした本を、書店員さんのポートレートつきで並べるコーナーをつくったりすると楽しいのになあ、と思います。で、服のマネキン買いみたいに、「あの店員さんのおすすめ本、ぜんぶください」なんてことになったりして。

黄黒さん。
いや、たぶんタダじゃないですから。ツケはいずれ払うことになりますから(^^;
しかし、1万2千円って、案外少ないですよねえ。そうですか、教科書5冊でおしまいですか‥‥。それなら、もっと他のものに使った方がよさそうですねえ。なんだかありがたみがない。
Posted by 清太郎 at 2009年01月11日 10:28
「中二階」おもしろそうだなと思いました。
気になる・・・すっごい気になる・・・
Posted by なお at 2009年01月11日 13:33
給付金で、お米と缶詰を買おうと思います。
余ったら、「枕元に靴」、の作者にビール券でも進呈します。
それでも余ったら、鈍行列車での気楽な旅に出ようかと思います。
それでも余ったら、車でも買おうかと思います。
それでも余ったら、都心の一等地のマンションでも購入しようかと思います。

Posted by すずめの巣 at 2009年01月11日 23:58
なおさん。
「中二階」いいですよー。気になるのだったら、ぜひ。図書館になければ、とりあえず本屋さんではじめの3ページくらい立ち読みしてみてください(^^)

すずめの巣さん。
夢は大きく膨らみますが、たぶん、お米はあきらめて缶詰1缶(さんまのかばやき)だけにして、それをもって鈍行電車に乗り、仙台あたりで下りて「枕もとに靴」の作者宛てに缶詰を郵便で送り、また電車に乗って戻ってくる、というくらいしかできないと思います。(まあそれだけできれば、かなりの充実ぶりですが。)
Posted by 清太郎 at 2009年01月12日 21:53
定額給付で何かを買う…本には十分お金をかけているけど、ふと振り返ると専門書だったり仕事に必要なものばかりだったりして、心から楽しんで呼んだ記憶は…ここしばらくないのです。
おまけにパソコンが逝かれて電源が入らない。しかもマザーボードの修理に5万円かかる…それなら新しく買ったほうがよいと、昨日買ってきたのですが、辞書の変換がむちゃくちゃで、お気に入りを一つ一つググッて新しくお気に入りに追加する…そういった作業でまた毎日がつぶれていく。一万二千円じゃおっつかない生活の柄。

そうかぁ、未成年は2万円も出るのですか。人の懐を当てにしてはいけないのですが、この際、定額給付金が出たらお小遣いはストップしてそれで生活をしてもらおう。これで家計も少しは助かるというものだ。

定額給付金が出たら子供たちの小遣いはしばし休止。景気浮揚策は貧乏な親たちの思惑によってうまくいきそうもありませんぜ。
Posted by 銀河旋風児 at 2009年01月15日 19:18
銀河旋風児さん。
本を読む楽しさの第一は、やっぱり、さしあたって役に立たない読書にこそあると思います。定額給付金を手に、なんとなく目についた本をパッと買って読む、くらいの贅沢ができるといいのかもしれませんが‥‥。
定額給付金、お子さんのお小遣いはもとより、
「定額給付金があるから、おとうさんのお小遣いも無しね」
という家庭もあるんじゃないかと思います。いやはや‥‥。
Posted by 清太郎 at 2009年01月16日 10:38
「枕元に靴」サイン本を長女に1冊あげたといったら、
「それはいろいろどうなのか?不味いんじゃないか?」
と言われたことが。w
当時長女は小6だったかと思うのですが(現在中3)立派なサンデー毎日読者に育っています。

彼女曰く、
「二行ですみそうな日常が、(紙面)1ページになって、かつ面白いのがすごい。」
そうです。
続編・サンデー毎日の編集編共に給付金で購入するにぴったりな1冊かと。
だって呑みたくなるし、物事楽天的になるじゃないですか。
不況なんてなんちゃないっって気分っすよ。
Posted by 未森 at 2009年01月18日 00:11
未森さん。
中3の乙女がサンデー毎日読者だなんて、立派な悪い影響のような気が‥‥。オッサンですか‥‥。
それに、「不況なんてなんちゃないっ」という気分になっても、(著者の生き方と同様)根本的なところは何も解決しないままなので、やっぱりあんまりよくない気もします‥‥(^^;
Posted by 清太郎 at 2009年01月18日 21:16
家族の金を足して、安くて、絶対倒産しない会社の株を買うつもり。
そのうち景気は回復するから、株価は2〜4倍になるかも。先が楽しみ。
本を買うという発想は出なかった。
Posted by 株を買う at 2009年02月20日 09:32
株を買うさん(?)
不況にも関わらず、前向きで攻めの姿勢ですね。家族のかたに理解してもらえるのでしょうか。
それにしても、「本を買うという発想は出なかった」といわれてしまう出版業界の情けなさよ……。
Posted by 清太郎 at 2009年02月20日 13:14
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