2008年12月07日

古典の日でいいのか

もうひと月以上前のことになっちゃいましたが、11月1日は「古典の日」になったそうです。

今年、2008年の11月1日は、源氏物語が書かれてから、少なくとも1000年。なぜ「少なくとも」なのか、なぜ「11月1日」なのかというと、「紫式部日記」の1008年11月1日(旧暦だから今の11月1日とはずいぶん違うはずだけど、気にしない)の項に、当時すでに源氏物語が読まれていたことをうかがわせる次のような記述があることから。

《左衛門督、「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ。」と、うかがひたまふ。源氏に似るべき人も見えたまはぬに、かの上はまいていかでものしたまはむと、聞きゐたり。》

敦成親王(後の後一条天皇)誕生祝いの宴席で、藤原公任(百人一首の「滝の音はたえて久しく〜」の歌を詠んだ人。当時40過ぎ)が、酔っぱらって(たぶん)、
「このへんに、若紫ちゃんはいないかにゃ〜、ゲヘへ」
などといいながらうろうろしてるのを見て、
「光源氏に似た男がいねーのに、若紫がいるわけねーっつーの」
という、なんというか「あーあ、この合コン、ハズレだわ。早く帰りたいんだけど」的ウザ感たっぷりの感想をもらしてる、という場面です。

で、「古典の日」。せっかく「源氏物語千年紀」なのに、なにゆえ「源氏物語の日」にしなかったのか。
おそらくは、
「源氏物語をはじめ、広く日本の古典文学全般に親しんでもらうきっかけになったら」
という目論みがひそんでいるんでしょうが、それは机上の空論というか、下司な根性。「源氏物語」として限定したところでなかなか源氏物語なんて手に取ってもらえないのだから、それを「古典」なんてぼんやりしたものに置き換えるなんて、何も言ってないのと同じではないか。「前年同月比2.5%アップを目標に」といった数値目標を、「みんなでがんばって営業成績を上げましょう」にするようなものです。

それに、これが「源氏物語の日」であれば、当然ながら次は、
「源氏物語の日があるのなら、われらが平家物語も『平家物語の日』を制定すべし」
「もちろん、『枕草子の日』も」
「『方丈記の日』も」
「『徒然草の日』も」
と、それぞれのファンが黙っていないわけで、古典文学業界といえど多少は活況を呈したはずです。それがこともあろうに「古典の日」では、この先、たとえば、「伊勢物語の日」を制定しようと申請すると、
「あー、もうすでに『古典の日』がありますからねー、ダブっちゃいますから、ダメです」
ということになるに違いなく、それでもゴリ押しして「伊勢物語の日」をつくろうとすると、
「あの源氏物語でさえ、表立って『源氏物語の日』を標榜せず、『古典の日』と謙遜しているのに、伊勢物語の分際で『伊勢物語の日』を僭称するとはどういうことだ!」
ということになるのは必定で、つまり将来の古典文学業界に対して障害とはなっても、プラスになることはまったくない。いったいどこの誰が「古典の日」なんて言い出したのか。責任者にはすみやかに猛省と撤回を促したい。

それはそうと、源氏物語千年紀を記念して、11月1日の記念式典をはじめ、展覧会や講演、コンサートなど各地でさまざまなイベントが催されているそうです。でもって、便乗した関連グッズもいろいろ出ているようですが‥‥。
生誕百二十年とか没後三十年とかじゃない、千年紀なんていう千年に1回しか記念できない祝典だというのに、その関連グッズが、
・「こころの京 玉乃光」源氏物語千年紀ボトル
・「源氏物語千年紀記念 京都限定 源氏物語のはろうきてぃ」根付け
・源氏物語千年紀「紫のゆかり、ふたたび」あぶらとり紙
・源氏物語千年紀記念漬け物「ゆかりむらさき」
こんなものでいいのか。

せめて、たとえば源氏物語キャラクタートレーディングカード(江口寿史やいとうのいぢをはじめ人気のイラストレーター・漫画家20余名が参加)とか、衣装着脱可能の空蝉フィギュアとか、人気声優を起用した源氏物語ドラマCD(葵上には釘宮理恵を配して、ツンデレを強調)とか、その方面のマニア心をくすぐるグッズは企画できなかったのか。こちらもやっぱり、責任者には猛省を促したい。

ちなみに、パチンコ「CR源氏物語」、というのも考えたのですが、でも念のためにググって見たら、とっくの昔に商品化されてました。「CR源氏ものがたり」だそうです。

《恋が成就すれば大当たり確定。
 リーチアクションは「禁断の琴」「恋の舟遊び」「愛の修羅場」など。
 変動開始時から恋の駆け引きは始まっているのだ。
 庭or廊下でのキャラ系予告、ステップアップ予告に和歌予告と複数の伏線が敷かれている。
 源氏がいきなり廊下を走り出すなどのリーチ確定の予告も多彩。
 リーチになれば源氏が麗しき女性の待つ部屋へ。
 御簾が開けば発展確定。セリフに注目だ。
「アツイ夜になりそう」などと言われた時には‥‥。》

‥‥パチンコやらないので、用語についてはまったく理解できないのですが、ちょっぴり気になります。


posted by 清太郎 at 09:28| Comment(4) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
源氏物語では自分の理想の女にするべく幼女を育てちゃう光源氏が好きです。
ナチュラルに黒いところが素敵だと思います

今授業で平家物語が終わったばかりなので「平家物語の日」ちょっと気になりました。
教科書に載ってるのは冒頭文のところと「敦盛の最期」だけなんですけどね(笑

腐女子仲間に「熊谷×敦盛」論を語られましたが個人的にはあんまり萌えませんでした。
でも「熊谷と敦盛を自分の好きなCPに当てはめて考えてみろ」と言われたので投影させて考えてみたら予想外に萌えてしまった自分が憎いです

よく考えてみたら野心に燃える男が美形な青年(少年?)に心を動かされその後の人生まで左右されるなんてどんな萌えだよって感じに思えてきた・・・
今度真面目に平家物語読んでみよう。

あーくだらないことグダグダ語って申し訳ありませんでした!
Posted by なお at 2008年12月07日 13:45
なおさん。
いえいえ、そういう身近(?)なところから古典への理解を深めていくのは、王道ですよ。熊谷×敦盛を語るなんて、いいお友達をお持ちではないですか。一緒に熱く語り合ってください(^^)
腐女子的には、「源氏物語」なら頭中将×源氏がまず基本ですよね。
「平家物語」なら、今井×木曽殿でしょうか。義経総受け本とか、ありそう。いや、受けと思わせて意外に弁慶×義経の方がおいしいのか、そのあたりは腐女子じゃないのでよくわかりませんが、なるべく不真面目に読むと、楽しいと思います。
Posted by 清太郎 at 2008年12月09日 12:30
伊勢物語の日は今業平とその名も高き人の七月二十五日でいかがか?
Posted by 銀河旋風児 at 2008年12月11日 23:19
銀河旋風児さん。
うーん、まあ在原業平の命日あたりが妥当なんではないでしょうか‥‥(^^;
Posted by 清太郎 at 2008年12月12日 15:33
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