2010年02月21日

書店ガイドツアー

美術館や博物館で、ガイドツアーなんてものがありますね。
ガイドさんが10人内外のお客をぞろぞろ先導して、主だった作品の前で、
「はーい、皆さん、注目〜」
とかいうの。
日本だとめちゃ混んでるか閑散としてるかのどっちかがほとんどなのであまり見かけませんが、欧米の大きな美術館・博物館ではあちこちで出くわします。
これを、本屋さんでできないか。

一般に、
「趣味は読書です。1か月に、えーと、10冊くらいは読むかな?」
という自称・読書家の人でも、その読書の内訳はほぼ小説だけだったり、あるいはその小説の中でも一部のジャンルに偏ってたりするわけで、いつも慣れ親しんでいる種類以外の本との出会いは、必ずしも多くはありません。
電子書籍やネット書店に対抗して、
「リアル書店は、本との偶然の出会いを提供できるのが強みです」
なんていう話をときどき聞くけれど、実のところ、大した広がりのない出会いの場にしかなってないような気がします。社内合コン程度の広がり、といった感じでしょうか。
とはいうものの、実際のところ、自分が知らない分野にチャレンジしようと思っても、どれがおもしろくて読むに値する本なのか、わからない人が多いでしょう。
そこで、そんな未知の本との出会いを求めるお客さんを集めて、書店内を案内して、いろんな分野のステキ本を紹介する、
「書店ガイドツアー」
というのがあってもいいんじゃないか。

たとえば、きれいなお姉さん書店員さんが、
「では皆さーん、右手をご覧くださーい。こちらは生物学コーナーです。ここでのおすすめは‥‥、そうねえ、これなんていかがでしょうか。木村李花子『野生馬を追う―ウマのフィールド・サイエンス』。著者は女性研究者で、原野にじっと身を潜めながら、野生の馬の群れをじーっと観察するんです。その描写がまた詩的で繊細で、自然科学の本なんだけど、なんか、もう、すごくって‥‥。ああ、馬って、いいわぁ‥‥(頬を染める)」
などとよくわからないけど色っぽくガイドしたり、あるいは、
「お次は、建築コーナーでーす。こちらでおすすめはぁ、えーと、ジャーン、これなんか、すっごいの。ジェフリー・ムーサス『縁側の思想』。マチャ、マサツー、マチャチュー、マチャツー、マサチューセッツ工科大学の建築科を出て、槇文彦と谷口吉生の下で働いたことのあるムーサスさんは、ガイジンだけど、京都の町家をリフォームしちゃったりして、すごいんですよー。タイトル見ると難しそーだけど、リフォームの話とか大家さんとの付き合いの話とかすっごい楽しくて、でもって、なんか日本建築の深いところも見えてきちゃったりなんかして、もう、ぜったい、おすすめ!」
などと甘ったれた感じでガイドしたりすると、いいところを見せたい男子客などが、
「じゃあ俺、それ、買っちゃおっかなー」
「俺も」
「俺も」
ということになったりしないかしら、とは思うものの、しかしどっちかというと、むしろ手堅く、中高年客を相手に、ベテランの(でもそれなりに若く、見た目もいい)店員さんによるガイドツアーのほうが、いいかもしれません。
結局のところ、こんなツアーを催しても、参加するのは中高年層ばかりのような気がするし。
お金があって暇もあるのは、リタイア組なんだろうし。
それにガイドする側にとっても、何十年もずーっと同じようなジャンルの本しか読んでこなかったオジサマオバサマに新たな読書のヨロコビを提案する、なんていうの、なんだかやりがいがありそうではないですか。
「俺が本当の読書の楽しみを教えてやるぜ!!」
なんて。

そうして、 そんな中高年のお客を引き連れて、文庫や文芸コーナーから人文、法経、理工書、美術などとすべて回って1〜2時間、1冊数分で数十冊の本を紹介するガイドツアー(もちろん、無料です)。
はじめは2、3人しか参加者がいないかもしれませんが、繰り返していくうちに口コミで広まり、リピーターもついて、
「火曜日の当番のタカシ君って子が、いいのよぅ」
なんて、ガイドさん目当てのお客さんも出てきたりして、そうなると当然、
「あらあ、もう終わりなの、残念だわあ。もっと、タカシ君に、いろんな本を、紹介してほしいわあ」
「ふふふ、奥様、でしたら、閉店後に、個人的に、いかがですか……」
ということになり、
「ただし、閉店後ですから、有料となりますが……」
ということになるんだけど、あらあ、やだわあ、だいじょうぶよぅ、そのくらいのお金は、あるわよぅ、うふふ。
ということになり、客のいなくなった夜の本屋さんで、一対一の濃密なガイド。
奥様はタカシ君の勧めるままにどんどん本を買い込んで、
「あらあ、ちょっと買いすぎちゃったかしらぁ。ねぇん、もしよかったらぁ、この本、うちまで持って帰るの、手伝ってくれるかしらぁん」
ということになり、
「あらやだ、うっかり忘れてたけど、今夜はうちのヒト、出張で留守だったんだわぁ」
ということになり、
「はい、タカシ君、ガイド代と持ち運びの手数料、お支払いするわね」
「奥さま、ちょっと多いようですが‥‥」
「やだあ、もう、うふぅん、わ・か・る、でしょ‥‥」
ということになり、でもっていつの間にかタカシ君の羽振りがよくなっちゃったりして、
「書店員のバイトって、時給が安くても、夜の仕事でけっこう儲かるらしいぜ」
「1年目でベンツ買ったって‥‥」
「てか、ベンツ買ってもらったっていうぜ‥‥」
ということになれば、書店業界に続々と人材が流入してきて、業界の活性化につながったりするんじゃないか、と思うんだけど、‥‥無理だよね。
それが可能なら、とっくの昔に、風俗業界の人が参入してます。


posted by 清太郎 at 19:19| Comment(3) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月14日

国民読書年テコ入れ

あいかわらず国民読書年が盛り上がりません。
1月の成人の日こそ、「20歳の20冊」なんて企画が持ち出されましたが、そのあとの節分の日には、
「今年は、豆の代わりに本を撒こう!」
なんていう気運はゼロ。今日のバレンタインデーも、
「チョコの代わりに本をあげるね。あたしだと思って、これを読んでね! ハイ、『罪と罰』」
ということもなくスルー。
少年ジャンプの読書アンケートでいえば、1週目だけは4位を獲得したものの、2週目ですでに2桁、その後も低迷したままで、今や最下位目前、といったところでしょうか。
となると、そろそろ、あれが必要なのかも。
あれが。
そう。
T・E・K・O・I・R・E。
テコ入れです。

伝統的・正統派のテコ入れ方法としては2種類の方法がありまして、ひとつは、
「バトル要素の導入」
です。
国民読書年なんて、どうせおとなしく静かに本読むだけでしょ、と思ってたら、いきなり、
「バトル開始!」
なのです。
しかも、「朗読大会」とかそういう生やさしいもんじゃありませんよ。肉がちぎれ、血しぶきが上がる、まさにジャンプ的な激闘です。
具体的には、
「天下一国民読書大会」
なんてどうでしょうか。
国民よ! これから最強の読書家を決める!
本を武器として、一対一で戦うのだ!
優勝者には図書カード100万円分!
ということで、ホームページか雑誌上で、大々的にエントリー募集が始まります。
もちろん、本といってもいろいろありますから、階級分けが必要ですね。
いちばん軽い、文庫級、コミック単行本級あたりから、新書級、単行本級、週刊少年マンガ誌級、写真集級などとあって、いちばんヘヴィーなのは国史大辞典級あたりで。
やがて各地の予選が始まり、バトルの様子はすべてネットで中継。
「女子中学の弱小文芸部が、部の存続をかけて、団体戦に参戦!」
といったような注目のトピックがあれば、各種の雑誌で取り上げたりなんかして、大会を盛り上げます。
でも、まあこれで1年もつほど世の中甘くないでしょうから、とりあえず春くらいをめどに天下一国民読書大会を開催するとして、その戦いの中、拳と拳を(というか本と本を)ぶつけ合った読書家たちの間には、いつしか熱い友情が‥‥。
そして戦いのさなか、彼らは気づいてしまうのだった、真の敵の存在に‥‥!
真の敵、それは、国民読書年の名のもとに国民の読書を統制しようとする悪の組織、暗黒国民読書団(略して書団)なのだった!
正義の読書家たちのもとへ、次から次へと送り出される書団からの刺客(武器は本です)。互いに協力し合いながら、その刺客たちとの苛烈な戦いをくぐり抜け(武器は本です)、読書家たちは、ついに大ボス、暗黒読書大帝を打ち倒すのだった!
というのが夏ごろで、しかし戦士たちの休息も束の間、暗黒読書大帝を操っていた裏の組織が存在していた!
ということになってさらに激烈な戦いが続けば、1年くらい何とかなるんじゃないでしょうか。

ちなみに、テコ入れ手段の2つ目は、
「お色気を導入」
で、具体的には、
「いきなり、本屋のお姉さんはみんなビキニ」
とかいうことで、どうせならバトル要素と一緒にして、
「水着姿で本バトル! ポロリもあるよ!」
というのでもいいかもしれませんが、しかし一歩間違えれば一般国民はおろか読書家からも見放されて、年半ばにして、
「国民読書年は今週で終わりです。みんな長い間ありがとう! 国民読書は永遠に不滅だ! 来週から始まる国民テレビ年を応援してね!」
ということになるかもしれないので、要注意です。


posted by 清太郎 at 19:05| Comment(4) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

マンガでわかる内科学

2月も、もう中旬です。
国民読書年が始まって、はや1ヶ月以上。
週末ごとに、全国各地の本屋さんや図書館で、多彩かつ心ときめくイベントが開催され、多くの参加者が読書のヨロコビを再発見し、「本って、やっぱりいいよね!」とあらためて読書意欲を高めている‥‥、のかもしれませんが、そういう話題はネットで流れないのか、実際に国民読書年活動が現場でどのように推進されているか、いまだによくわかりません。ヨミネエもあいかわらずマイナーなままだし。今ってホントに国民読書年なの? 昨年と何が違うの?

‥‥などといいつつ、このブログも国民読書年だっていうのに丸々1ヶ月更新してなくて、ぜんぜんダメですね。まず自分が国民読書しないとね。
ということで、まったく面目ない限りですが、久しぶりの更新です。皆様、お元気ですか。

さて。
昨年の終わりから今年にかけて出た本の中で、大きな収穫といえるもののひとつは、
岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)
でしょう。
野球部の女子マネージャーになったみなみちゃんが、マネージャーって何すればいいんだろう‥‥、と思って本屋さんでうっかり買っちゃったのがドラッカーによる経営学の古典『マネジメント』で‥‥。
というバカすぎる設定の、つまり、
「ラノベでわかるドラッカー」
といったところ。
ありえない筋立てながら、なかなかよくできていて(たぶん。立ち読みしただけなんだけど)、イラストのレベルも合格点で、うーん、ヤラレタ、という感じ。
「まだまだ、本にできることはたくさんある」
と、本の可能性をあらためて教えてくれた一冊でした(立ち読みしただけなんだけど)。

それはそれとして、こうした「ラノベでわかる」に先行する、
「マンガでわかる」
について、今日は考えてみましょう。
「マンガでわかる」というジャンルは、小学校の図書館で人気の「まんが日本の歴史」や学研「ひみつ」シリーズを持ち出すまでもなく、それなりに長い歴史と広がりを持っています(ちゃんと体系化された資料があったら読んでみたい)。が、その長い歴史のわりには、なんというか成熟していないというか、B級のままというか、あいかわらず日陰者というか、そんな存在であり続けてきたような気がします。
まあ、ようするに、「マンガでわかる」とかいいながら、
・結局、わからない
・マンガは一部で、実は文章が多い
・マンガがおもしろくない
・っていうか、それ以前に、絵がヘタ
といった作品が多かったわけです(たとえば「日本の歴史」も、小学館の児玉幸多監修のもの以外は、子どもをバカにしてるのか! と子どもながらに思う作品ばかりでした)。
このジャンルでいい作品って、赤塚不二夫『ニャロメのおもしろ数学教室』と、あさりよしとお『まんがサイエンス』と、えーと‥‥、とそのくらいしか思いつかない。
というような状況が、ずっと続いていました。

それが最近、印象としては2000年代に入ってからなんですが、底辺のレベルアップがはかられたのか、安いギャラでもたくさん描ける若い子が増えたのか、編集者のマンガを見る目が多少洗練されてきたのか、
「少なくとも、絵はそこそこ上手」
という作品が多くなってきたように思います。(マンガとしておもしろいかどうか、さらに結局わかるかどうかはさておき。)
ちゃんと一冊読み通したことがないのでテキトーな印象ですが、オーム社の「マンガでわかる」シリーズとか、学研の「大学受験らくらくブック」とか、わりとよさげ。
また、内容的にも、「物理」とか「量子論」とかざっくりしたものだけでなく、
・マンガでわかるフーリエ解析
・マンガでわかる統計学 回帰分析編
・マンガでわかるシーケンス制御
といった細分化が目立つようになっています(これらはオーム社のシリーズ)。
今後はキャラの細分化が進みそうで、『ねこ耳少女の量子論』(PHP研究所)とか、あるいは先日本屋さんで、
『ツンデレ相対性理論』(PHP研究所)
なんてのも見かけました。
読んでないので内容はよくわかんないけど、ツンデレで相対性理論ってことは、
「ヒカリちゃん、今ちょっと、曲がったでしょ」
「な、何言ってんの、曲がってないわよ」
「えー、そうかなあ、さっき、重力に‥‥」
「じゅ、重力、って何よ、重力がなんで関係あるのよ!」
「へー、そうかなー」
「そそそ、そうよ、じゅ、重力のことなんて、ぜーんぜん知らないんだから!」
「ふーん、そう。それなら、試しちゃおっかなー。重力レンズ効果で……」
「だ、だめーっ! 見ちゃダメーーーー!!」
という感じなんでしょうか。

ともあれ、このようにジャンルの細分化に加えて、その細分化されたジャンルのひとつひとつにツンデレやらネコ耳やら妹やら巫女やらがあり、一定以上のレベルの描き手が供給されるとなると、今後、「マンガでわかる」は大きく(というほどではないにせよ)花開くかもしれません。(マンガで実用書となると、電子書籍との相性もよさそうだし。)
やがては、
・マンガでわかる建築構造計算
・マンガでわかる二次元以上での実空間くりこみ群
・マンガでわかる小学校学級経営
・ツンデレ労働契約法
・ろりぷに社会選択理論
・巫女と学ぼう! イスラム教の歴史
・ご主人様のための土木計画学
・シリーズ・教えて!おにいちゃん マーケティング理論
と、たいていのことがマンガでわかるようになります。

お母さんも、もう「マンガばっか読んでないで勉強しなさい!」なんて言えませんよ。マンガを読めば受験も完璧。
・マンガでわかる地理B
・ツンデレ基礎解析
・センター試験ネコミミ過去問題集
大学受験に限らず、たとえば医師国家試験なんかでも、
・マンガでわかる内科学
・ツンデレ解剖学講義
・眼鏡っ子といっしょに基礎病理学
とかいっぱい出てますから、勉強もなんだか楽チン。
そうして晴れてお医者になったら、医学書はすべて「マンガでわかる」。
・マンガでわかるハリソン内科学
・マンガ版ワシントン外科マニュアル
・ご主人様のための薬物治療の基礎と臨床
・シリーズ・教えて!おにいちゃん 放射線診断学
最新の研究成果や医療技術もどんどん「マンガでわかる」。
・魔法少女メディの内視鏡的胃瘻造設法の適応と実際
・スク水少女が教える! ステントを併用した動脈瘤塞栓術
・腰部脊柱管狭窄症でのLipo PGE1注射剤を用いたツンデレ保存的治療

‥‥と、こんなことをいいながら、でも、初めて受診する病院の診療室で、本棚に「マンガでわかる内科学」「ニーソ少女の標準病理学」「ドジっ娘といっしょに最新免疫療法」などが並んでるのを見つけたら‥‥、そんなお医者さんには、かかりたくないです。


posted by 清太郎 at 19:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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