2007年08月31日

岩波文庫五人姉妹の週末

前回の「岩波文庫五人姉妹」が好評で、読者のかしこさんから、なんともステキなイラストを投稿いただきました。わーい。ということで、ここに掲載。わー、パチパチパチ。

iwanami01.gif

そうそう、これこれ、こんな感じの五人姉妹なんです。実のところ、みどりちゃんについては、「主役を張れる」と書きながらもなんだかキャラが弱いかもと思ってたのだけど、この絵を見ると、いや、じゅうぶん独り立ちできそうです。
掲載許諾の返事のともに、さらに追加2点のイラストもいただきました。ありがとうございます!

iwanami02.gif
そういえば眼鏡は必須アイテムでした。

iwanami03.gif
ましろちゃん、絶対わかって言ってる‥‥。

早川書房に負けじと、岩波書店もこんな感じで「岩波文庫五人姉妹フェア」などを開催してもらいたいものですね。赤帯、緑帯など、それぞれ10冊ずつ読んで応募すると、フィギュアや等身大抱き枕が当たったりするの。ラインナップの少ない白帯のましろちゃん(末の妹は、しろみちゃんを改め、ましろちゃんにしました)のグッズはかなりのレアになります。

さて、もらいっぱなしではなんだか面目ない気がするので、五人姉妹の日常をちょっと考えてみました。上のイラストの少女たちを思い描きながら、以下をどうぞ。

「岩波文庫五人姉妹の週末」

とある週末の夜、いつものように自宅のリビングに揃った五人姉妹。めいめいが岩波文庫を読んでいる。長女きこと三女みどりは、それぞれソファの両隅に座って、四女あおいは部屋の隅に置かれたロッキングチェアで、次女あかりは床に寝ころんで、末妹ましろはテーブルの上に本を広げている。
庭に面した窓は開いており、秋の初めならではの心地よい夜風がカーテンを揺らしている。聞こえるのはただ虫の声と、ページをめくる音ばかり‥‥。

あかり (読んでいた本を勢いよく閉じると、大声で)あー、おもしろかった! いい! これ! いい! すごい! 百点!(寝転がったまま、高々と文庫本を掲げる)
みどり なあに、その本?
あかり これ! じゃーん、トルストイ『アンナ・カレーニナ』! そうだ、みどり。(勢いよく立ち上がると、みどりが手にしていた本をとりあげて)こんなの読んでないで、ほら、こっち読みな、ぜったいおもしろいから!
みどり ひゃうん、あかりちゃあん、それ、まだわたし読みかけ‥‥。
あかり いいのいいの、それより『アンナ・カレーニナ』! ほら! さあ!
みどり ‥‥でも、あかりちゃん、それ下巻だよ。『アンナ・カレーニナ(下)』って‥‥。
あかり (一瞬かたまり、頬が少し染まる。が、いっそうムキになって)うるさい、みどりのくせにナマイキ言うんじゃない。みどりは下巻から読めばいいの。ほら! さあ! さあ!
みどり ひゃうん‥‥(すでに涙目)。
きこ  (二人の間をとりなすように)あらあら、あかりちゃん、みどりちゃんをいじめちゃダメよ。(あかりの注意をみどりから逸らすように)ね、『アンナ・カレーニナ』って、どんな話なの?
あかり おもしろいんだよー、きこネエも読む? アンナって女が、ウロンスキイって人を好きになって、いろいろあって、最後は自殺しちゃうの!
きこ  ‥‥。
あおい (部屋の隅にいて、以上のやりとりを聞いていないようでいて、実は聞いている。読んでいる本に目を落としたまま、ボソッとつぶやくように)この前の『ボヴァリー夫人』も百点って言ってたよね。
あかり いやあ、あれもおもしろかったなー、エンマって女が、レオンって人を好きになって、いろいろあって、最後に自殺しちゃう。
一同  ‥‥。
あおい じゃあ、そのちょっと前の『若きウェルテルの悩み』は?
あかり あれもよかった! ウェルテルって青年が美少女ロッテを好きになって、いろいろあって、最後に自殺しちゃうんだよなー。
一同  ‥‥。
(窓の外から、ウマオイの鳴き声が響く。スイーッチョン、スイーッチョン)
きこ  (真顔で、心配そうに)自殺自殺自殺って、あかりちゃん、あなた、何か悩みでもあるの?
あおい (小声で)って、ツッコミどころは、そこかい。
ましろ (テーブルに肩肘をついて、大人びた声で)きこ姉ちゃん、そんな心配、必要ないから。『アンナ・カレーニナ』も『ボヴァリー夫人』も『ウェルテル』も一緒になっちゃうガサツ者のあかりちゃんに、悩みなんて、ないから。
あかり 何だと、このー、マセガキましろめ!(ましろに飛びかかろうとする)
ましろ (逃げながら)きゃー、きこ姉ちゃん、あかりがいじめるー。
きこ  あらあら。
みどり ひゃうぅん、あかりちゃん、そろそろ、本かえして‥‥(涙)。
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2007年08月27日

岩波文庫五人姉妹

「今日の早川さん」が早川書房から単行本化されるそうですね。9月7日発売。SFが好きな早川さんを中心に、ホラー・ミステリ好きの帆掛さん、純文学好きの岩波さん、ライトノベルファンの富士見さんといった女子が、本をめぐっていろいろする楽しくて悲惨な日常のアレコレ4コママンガ。SFファンとメガネ女子ファンにはたまらぬ内容です。
しかし、これ、早川だけに独占させておくのはもったいない。他の文庫のファンの人にもがんばってもらいたいものです。

たとえば、岩波文庫。
周知の通り、岩波文庫はジャンルごとに5色の帯で色分けされています。赤(外国文学)、緑(日本文学)、黄(日本古典)、青(哲学歴史自然科学など)、白(社会科学)です。(あらためて並べてみると、青はごたまぜに過ぎるし、白は限定的過ぎるよね。)
この5色、5ジャンルを使えば、それなりの(ありがちな)キャラクター設定ができるはず。「岩波文庫五人姉妹」です。
赤:岩波あかり
緑:岩波みどり
黄:岩波きこ
青:岩波あおい
白:岩波しろみ

名前はこれでいいとして、年齢や性格付けはどうすべきか。
5人の中でいちばん明るくて快活そうなのは、赤のあかりちゃんでしょう。「赤と黒」やら「嵐が丘」やら、情熱的な作品をいっぱい抱えてますし。一方、比較的親しみやすい日本文学の緑帯、みどりちゃんも、主役を張れるキャラ。「三四郎」やら「蒲団」やらがありますし、暴走気味のあかりちゃんに、いつも振り回されているかわいそうな役どころです。
ふたりがこんな感じであれば、定番として必要なのが、おっとり系の長女役でしょうね。青も白も黄も、どれも長女になりそうですが、古典ということもあって、黄帯のきこちゃんにお姉さんになってもらいましょう。残る青と白には、最近の萌えに不可欠な、ツンデレ、小学生などの属性を振り分ければ、バランスがとれると思います。
ということで、まとめてみると‥‥。

長女:岩波きこ(21歳・女子大生)
4人の妹たちをやさしく包むお姉さん。おっとりした性格で、天然ドジっ娘。スタイル抜群。男子からモテモテなんだけど、本人はぜんぜん気付いていない。そのあたり、妹たちから見て、ちょっとハラハラすることも。泣きぼくろがある。愛読書は佐伯梅友校注「古今和歌集」。

次女:岩波あかり(17歳・高二)
明朗快活、カラリサッパリ、豪放磊落で、トラブルメーカー。アウトドア派でスポーツが得意、声が大きい。ガサツなようでいて、案外、料理が得意だったりする。愛読書はフィールディング「トム・ヂョウンズ」。

三女:岩波みどり(16歳・高一)
次女のあかりにいつも振り回されている受け身オロオロキャラ。泣き虫。五人の中でいつも貧乏くじを引いているけれど、いじられつつもいちばん大事にされている。愛読書は幸田露伴「運命」。

四女:岩波あおい(14歳・中二)
本の虫。いつも本を小わきにかかえている。無口で、日常会話は最低限で済ませる。そのくせ、雑学豊富でいろんなことを知っているので、みどりに頼られている。一見、クールなようでいて、ちょっとやさしくされるとすぐ真っ赤になって照れたりして、ツンデレ。愛読書はユクスキュル&クリサート「生物から見た世界」。

五女:岩波しろみ(10歳・小四)
小学生で、腹黒キャラ。あどけないふりをして、グサッとくるような毒を吐くのが得意。でも甘えん坊で、長女のきこにベッタリ。髪はツインテール。愛読書はジョン・スチュアート・ミル「ミル自伝」(きこ姉ちゃんに読んでもらった)。

ということで、この設定で(いや、別にこんな設定じゃなくてもいいんだけど)、誰か岩波文庫マンガを描いてくれないものでしょうか‥‥。
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2007年08月24日

君と読みたい本がある

毎年、この時期の恒例となっている話題ですが、読書週間(10月27日〜11月9日)の標語が決まったそうです。今年は、これ。
「君と読みたい本がある」
‥‥えーと、なんか、これ、エッチっぽくない?

たとえばサークルの飲み会の帰りに、ちょっと気になってる後輩のヨシノさんが一緒になったりして、お酒につよくない彼女は、けっこう酔ってる雰囲気。そんな彼女へ、少し身を寄せて、
「ねえ、ヨシノさん、実はさいきん、いい本、手に入れたんだ」
「なんれすかー、せんぱぁい」
「フィリップ・マクドナルドの『ライノクス殺人事件』」
「えー、ホントれすかー、すごぅい、いいなあ、あたしも読みたぁい」
「じゃあ、どうだい、今日ちょっと、うちに寄ってく? 貸してあげるよ」
「えー、いいんれすかー、わぁい、やふー」
といった流れになっちゃったりして‥‥。あ、でも、これでは「君と読みたい」ではなくて「君に貸したい」かなあ。

「君と読みたい」なら、こうかな。男女逆転。たとえば会社の飲み会の帰りに、ちょっと気になってる後輩のヨシダくんと一緒になったりして、お酒につよくない彼は、けっこう酔ってる雰囲気。そんな彼に、少し身を寄せて、
「ねえ、ヨシダくん、あたし、さいきん、いい本、手に入れたのよ」
「なんれすかー、せんぱぁい」
「フィリップ・マクドナルドの『ライノクス殺人事件』」
「えー、ホントれすかー、すごいれすー、ぼくも読みたいなあ、貸してくださいよう」
「じゃあ、どう、今日ちょっと、うちに寄ってく?」
「えー、いいんれすかー、わぁい、やふー」
「あ、でも、ダメ、買ったばかりで、私もまだ、読んでないの」
「えー、そうなんれすかぁ、ざんねんれすー」
「じゃーあ、どう、ヨシダくんさえよければ‥‥」
「なんれすかー」
「これから、うちで、一緒に読まない?」
いい! ぜひ! せんぱぁい、僕も一緒に読みたいれす! どどど、どこで一緒に、よよ読みますか、ソファですか、そそそそそれとも、べべべべベッドの上、そそそそそそそれとも、ももももももしかして、おおおおふろ‥‥。
いや、大事な本をお風呂なんかで読んではいけません。

ちなみに、ここ数年の標語を見ると、
「落ち葉をしおりに、読書の秋」(2004)
「本を読んでる君が好き」(2005)
「しおりいらずの一気読み」(2006)
今年は「君と読みたい本がある」で、「しおり」と「君」が交互に来てますから、来年はまた「しおり」関連の標語になりそうです。
「君の小指が、僕のしおり」
とかいって(いや、「しおり」に加えて「君」も入ってしまったうえに、意味不明)。
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2007年08月21日

デスノート風「人間失格」をまねる

すでに出版業界以外でも大きな話題になってますが、集英社文庫の「人間失格」が漫画家・小畑健の表紙イラストのおかげで1カ月半で7万5千部を売り上げたそうですね。小畑健のイラスト、というより「DEATH NOTE」の主人公・キラこと夜神月(やがみ・らいと)そのまんまのイラスト、ということで、「人間失格」の主人公に夜神月のキャラクターを重ねたところが大いに受けたのでしょう。「週刊少年ジャンプ」を擁している集英社ならではのコラボ。正直いって、内容的には「人間失格」と夜神月ってぜんぜん関係なくて、むしろ「罪と罰」なんかの方がピッタリなんですが(自分は何してもいいんだと思ってるところとか、あるいは予審判事ポルフィーリィを相手にした、こいつは俺を疑っているんだろうかどうだろうか、というジリジリするような心理戦とか。「人間失格」ならむしろエヴァンゲリオンのシンジくんあたりなのでは)、勝てば官軍、売れればいいんです。それに、分厚い「罪と罰」上下二巻では、「DEATH NOTE」のキャラを総動員しても、さすがにここまで売れないでしょうし。

ともあれ、工夫によってはお堅いブンガクも大いに売れる!と、他の出版社も柳の下の二匹目、三匹目のどじょうをねらっていることと思います(そういえば、山本周五郎「さぶ」も池上遼一の男組的な表紙でしたが、あれも素直に「男組」あるいは「男大空」そのまんまの表紙にすればよかったのかも)。すでに、賢い編集者の人がいろいろ企画を錬っているんでしょうが、遅ればせながら、ここでもちょっと考えてみましょう。
どんな小説に、どんなマンガの表紙がいいのか‥‥。

「MONSTER」でヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」
名門の幼い兄妹の心身を支配し、彼らを堕落させようとする亡霊‥‥。それは語り手である家庭教師の妄想でしかないのか、どうなのか‥‥。という話に出てくる男の子のイメージって、浦沢直樹「MONSTER」のヨハンでいいと思うのだけど。

「美味しんぼ」の海原雄山と栗田さんが表紙で、川端康成「山の音」
六十を過ぎた信吾と、息子の嫁・菊子さんとの間の微妙な交情‥‥、ということで、海原雄山×栗田さんは、ありかも。あるいは嫁の颯子さんの足をなめちゃったりする谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」のほうがどちらかというと「美味しんぼ」っぽいかしら。「こ、この味は‥‥!」みたいな。

「ブラックジャック」または「ブラックジャックによろしく」で泉鏡花「外科室」
麻酔を打たれると、無意識にあなたへの思いを口にしてしまうかもしれない、だから私は麻酔なしで手術を受けます‥‥、という「外科室」。なんとなく「ブラックジャック」のエピソードにあってもおかしくない気もするけど、鏡花ではイメージが違うかなあ。

「NARUTO」で山田風太郎「甲賀忍法帖」
‥‥ダメだよね。忍者、というだけしか共通点がないし。っていうか、NARUTOの絵にしなくても山田風太郎は売れてるし。むしろ山田風太郎の何たるかを知らず、絵だけ見て買っちゃったNARUTOファン女子中学生が、電車の中でこれを読もうとしてちょっと困ったりするかもしれないし。

「ONE PIECE」で三島由紀夫「午後の曳航」
‥‥これも単に、船乗り、というだけ。っていうか、ONE PIECEは船乗りじゃなくて海賊か。崇拝する船乗りの竜二が、自分の母と結婚して海を捨てようとしているのを知った13歳の少年・登は‥‥、という話。これもやはり、表紙だけ見てジャケ買いした中学生女子が、なんとなく腐女子方面に目覚めてしまいそうで、あまり教育上よくなさそう。あ、でも、ONE PIECEでジャケ買いするような女子は、すでに腐女子か。

「あずまんが大王」で谷崎潤一郎「細雪」
女子がたくさん出てくる話だから、ってことで。でもこんな表紙では、「細雪」の世界、台なし。

仮面ライダーの表紙でカフカ「変身」
そりゃ、「虫」に変身する話だけど、ちょっと‥‥。

‥‥案外、難しいものです。
posted by 清太郎 at 23:34| Comment(7) | TrackBack(1) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月18日

文学ファン検定

先日の「文学マニア検定(初級)」、それなりに好評をいただいたものの、しかし合格率1割以下で、ぜんぜん検定になってないじゃん。うーむ、難しすぎたのかなあ。反省してます。
まあ、これと同じものを高校生のときの私がやったとしたら、たぶんメタメタにわからなかったでしょうから、ある程度の正答率の低さは覚悟していたのですが。だからといって、自分にとってつまらない内容のものをつくっても意味がないし‥‥。というので、そのあたりのバランスのとり方って、難しいですね。
しかし、どうなんでしょう。たとえば、川端康成は自殺したとか、坊っちゃんは鉄道技師になったとか、なんとなく一般教養レベルの知識のように思っていたのだけれど、本当にそうなのか。

島崎藤村が妊娠させた挙げ句、自分はパリに逃げちゃった、その相手とは?
(1)友人の妻 (2)自分の娘 (3)姪

という設問は、履歴書の趣味の欄に「読書」と書くような人にとって失笑レベルの常識問題なのか、そうではないのか。などと考えると、うーん、よくわからない。

ということで、とにかくそんな反省をふまえて、あらためて検定を作成してみました。マニアレベルから難易度を落として「ファン」レベルということで、文学ファン検定です。設問形式も、四択から三択にあらためました。文学マニア検定(初級)で、ムキー!と思われたかたは、ぜひどうぞ。



これでも難しいんじゃないの、とか、いきなり簡単になりすぎたよー、とか、この設問はマニアレベルだ、とかいうご意見があればお聞かせください。(って、そんなにムキになってつくらなくてもいいような気がするんだけど。)
posted by 清太郎 at 23:43| Comment(11) | TrackBack(1) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月15日

子ども読書の街

文部科学省が、子どもの読書活動を推進する「子ども読書の街」事業を始めている、という話が、先日ニュースになっていた。8月中にも全国の自治体から10市区町村を指定するそうで、すでに全国の各教育委員会からアイデアを募集しているとのこと。選ばれた自治体には、それぞれ約1500万円を上限に経費が支給される。「読書の街」の要件とは、すべての小中高校が何らかの形でかかわること、他の地域がモデルにできるような独創性と普遍性を持つことなど。

その実効性はともかく、どの自治体も差別化やブランディングに地道をあげている昨今、「読書の街」だなんてなんだか頭よさそうで品行方正っぽいイメージの称号が手に入るだけでも大いに喜ばしいことだろう。

しかし、「子ども読書の街」では、漠然としすぎる。一体どんな街が、「子ども読書の街」といえるのか。やっぱり、子ども達がたくさん本を読む街、なのかなあ。
そうなると、この手のことでありがちな根本的な間違いは、子ども全員、クラスに30人いたらその30人全員に読書をさせる、本好きにする、なんてのを目標にすることだろう。これが絵空事なのは明らかで、子ども全員をスポーツ好きにする、合唱好きにする、算数好きにする、なんてのが無理なんだから、読書だけが例外であるはずがない。
その点さえわきまえれば、子ども達がたくさん本を読む街を実現するためにはどうすればいいかは、明らかだ。次の2点しかない。

(1)子どもが本嫌いにならないようにする
(2)本好きの子どもをもっと本好きにする

デフォルト状態に比べて、本を嫌いになる子が現れず、本を読む子がもっと読むようになれば、全体としてはより多くの本が読まれるわけだ。

では具体的には何をすればいいのか、なのだけれど、(1)については、これはもう簡単。多くの子どもたちのトラウマとなっている夏休みの読書感想文を廃止する。それだけでいい。(もちろん、感想文を書いてコンクールに応募したい、という奇特な子がいれば、万全の体制でサポートするべきだろうが。)
(2)のほうはいろいろな策があるだろうが、たとえば、読みたい本を入手しやすくする、なんていうだけでもいい。市内の書店で、市内の学校に通う子どもが学割料金で本が買えるようにする、というのはどうだろう。10%オフとかいうケチくさいのじゃなくて、ズバリ半額。わーい。

よーし、がんばれ、子ども読書の街!と思って、あらためてニュースを見たら、
「読み聞かせのイベントなど、子どもの「読む」「調べる」力を伸ばす活動を想定している。」
などと書いてあって、なーんだ、単純な「子ども達がたくさん本を読む街」ではないみたい。っていうか、それって、「読書の街」じゃないじゃん。
読書がお勉強になってしまっているかぎり、子どもの読書活動はあんまり「推進」されないと思う‥‥。
posted by 清太郎 at 21:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月11日

文学マニア検定(初級)

先日からちょっと気になっているニンテンドーDS「一度は読んでおきたい日本文学100選」、いつの間にか発売されていたので、ホームページを見てみたら、「文学検定クイズ」が置いてありました。
で、さっそくやってみたところ、なんというかヘナチョコな内容。こんなので「文学博士」とか「権威」とかいわれてもねえ。

ということで、それならば、と自分でつくってみました。最近、検定モノが話題で、「けんてーごっこ」というぴったりのサイトもありますし。
興味のあるかたは、お試しあれ。「文学マニア検定(初級)」です。



しかし、この「けんてーごっこ」、問題文が40字までしか入れられないのね。なので、たとえば、

「ガリヴァー旅行記」で知られるスウィフトの短編「貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」。さて、貧家の子女の有効利用法とは?
(1)鉱山労働に従事させる
(2)ペットにする
(3)食用にする
(4)砕いて肥料にする

というような問題をつくろうとすると、「貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」だけで文字数オーバーになっちゃう。
(ちなみに、答えはもちろん3番。子女といっても、1歳の赤ん坊です。)
選択肢の文字数も18字までだし。おかげで検定というより、単なるクイズになってしまったのだけれど、しかしこの手の検定モノのほとんどは単なるクイズとあまり変わりがない気がするので、ま、いっか。
posted by 清太郎 at 12:59| Comment(6) | TrackBack(2) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月07日

まんが甲子園が変える日本マンガ界の未来

もうすぐ甲子園の高校野球が開幕しますが、ひと足先に、「まんが甲子園」の方は閉幕しました。今年の最優秀賞は志貴野高校(富山)。昨年話題になった花咲徳栄高校(埼玉)は、残念ながら入賞どまりでした。今年からは、小学館と講談社の編集者らによる「スカウト制度」が始まったそうで、このまんが甲子園、地味ながら少しずつ知名度を上げてきています。

知名度が上がってくると、次はもちろん「特待生」ですよね。そういえば野球部の特待生問題、どうなっちゃったのかよくわかんないのですが、これまで特待制度の埒外にあった漫研にも、特待制度が導入されることになります。
中学時代、週刊ジャンプなんかへの投稿やらコミケでの同人誌販売などで頭角を現したマンガ好き少年少女が、闇のブローカーなどを通じて、各地の有力漫研を擁する高校に特待生として送り込まれます。花咲徳栄高校をはじめとする強豪校は、漫研部員専用の寮などを用意し、全国からさらなる人材を集めようとするかもしれません。
まんが甲子園優勝という大きな目標を持った漫研部員たちは、同世代のライバルたちを意識しながらマンガに精進、切磋琢磨しつつ力をつけていくことになるでしょう。弱小漫研にひょんなことから(たとえば先輩がかわいかったからとか)入部してしまった、これまでマンガなんて描いたことがない、美術の成績が1のヘタレ少年が、漫研部員たちとの交流や、ときには衝突を通じてメキメキと力を上げ、ついにはまんが甲子園に出場、そして立ちはだかる強豪校を打ち破り‥‥、という、
「まんが甲子園マンガ」
も、次々と出てくるに違いありません。
そうして、中高生全体のマンガ力が底上げされ、
「まんが甲子園で活躍→出版社によるスカウト→プロデビュー」
という道筋が確立されてくると、全国のお父さん、お母さんの中には、
「わが子に幼いうちから英才教育をほどこし、漫研強豪校に入れ、いずれプロとしてデビューさせよう」
と考える人も出てくることでしょう。教育熱心なお母さんなどは、わが子とともに、
「学校から帰ったら、深夜までマンガの特訓」
に励むかもしれません。知人を介して見つけ出した元漫画誌編集者に頼んで、
「マンガ家庭教師」
をやってもらう、ということも一般化するはずです。
「先生、ぼく、もう、描けません! 手が、手の豆がつぶれて‥‥、うう‥‥」
「バカヤロウ! 手がダメなら、足で描け! そんなことで弱音を吐いちゃあ、まんが甲子園に行けないぞ!」
叱咤した先生が、血まみれの手でペンをにぎる少年の背に向かって、
「がんばるんだ、タカシ、おまえには、才能がある。俺が果たせなかった、まんが甲子園出場も、おまえならできるはずだ‥‥」
などとつぶやきながら音もなく涙を流したりして。

これからのまんが甲子園の発展が、楽しみです。
posted by 清太郎 at 12:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月01日

長い題名の本

ずいぶん昔、三代目魚武濱田成夫の「君が前の彼氏とキスした回数なんて俺が3日で抜いてやるぜ」を本屋さんで見かけたときには、
「おお、なんという長いタイトルの本であるか」
と驚いたものでした。それまでは、長い題名(副題を除くよ)というのは、目次に並ぶ作品のひとつではありえても(たとえば、短編作品のタイトル。ポーの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」とか、スウィフトの「貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」とか)、背表紙に堂々と印字される、本そのものの題名とはなりえない、と漠然と思っていたからです。(まあ、ロビンソン・クルーソーの原題がめんちゃんこ長い、というのは例外として。ちなみに、スウィフトの「貧家の子女〜」は人肉ネタ。スウィフトらしいブラックな作品です。)

ところが当節、長い題名は大はやり。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」のヒットで、疑問形で終わる題名が増えたころからでしょうか。特にビジネス系の書籍には、「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」とか「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」とか「中学生への授業をもとにした世界一簡単な「株」の本」とか、あるていど長いタイトルがむしろ普通になってきたような気がします。
長いことで人目を引く(最近はそうともいえませんが)こと、どんな内容なのかがパッと見ただけでもわかりやすいことがメリットとして考えられているのでしょう。

もっとも、過ぎたるは及ばざるがごとし、なのでして、あまり長すぎるとかえって逆効果のようです。おそらく、
雨の夜にカサもささずにトレンチコートのえりを立ててバラの花を抱えて青春の影を歌いながら「悪かった。やっぱり俺…。」って言ってむかえに来てほしい。」(イチハラヒロコ、アリアドネ企画)
このくらいが、長さの上限ではないでしょうか。(ちなみに著者はランゲージアーティストで、この長い題名それ自体が、ひとつの作品でもあります。だからこれは、和歌集のタイトルに、和歌を一首そのまま使っているようなものです。)

これより長くなると、ことさら人目を引くこともなくなりますし、内容の把握すら不可能になります。たとえば、これ。
悩みも迷いも若者の特技だと思えば気にすることないですよ。皆そうして大人になっていくわけだから。ぼくなんかも悩みと迷いの天才だったですよ。悩みも迷いもないところには進歩もないと思って好きな仕事なら何でもいい。見つけてやってください。」(横尾忠則、勉誠出版)
そのうえ、ここまで長いと、雑誌や新聞の書評欄なんかにも取り上げにくくなるし(内容の紹介が題名よりも短くなりそう)、本屋さんや図書館に問いあわせるときにも困ります。(「えーと、ほら、すごい長い名前のタイトルで、ほら、なんかちょっと若者向けっぽい感じで、あんまり聞いたことない出版社で、えーと、何だっけ‥‥」「あ、わかりました。たぶん、これですね」と出されたものが、「新版・十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本」(平田オリザ、晩聲社)だったりすることになる。)

「新聞や雑誌に載らなくてもいい。今、時代はインターネットなんだ。文字数がいくらだろうと、コピペすればいい。ネットであれば、題名の長短に関係なく、ちゃんと紹介してくれる。最近は本屋さんになんか行かない、すべてamazonで買ってる」
という意見があるかもしれませんが、それは甘いというものです。
今、amazonを見たところ、表示されている題名は、
「悩みも迷いも若者の特技だと思えば気にすることないですよ。皆そ」
でした。
posted by 清太郎 at 22:25| Comment(8) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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