2006年02月28日

小説のイナバウアー

今回のオリンピックで、一躍流行語(?)となった「イナバウアー」。もともとドイツのイナ・バウアー選手が初めてやった技というので、この名前がついたそうです。イナバウアーに限らず、ビールマン、アクセル、サルコーも選手の名前(知ってました?)。体操競技にもトカチェフとかコバチとかモリスエとか、選手名に由来する技がいろいろありますよね。
ここで注意したいのは、こうしたスポーツの世界では、技を創始した当人以外の選手がその技を演じることが、プラスの評価を受ける、ということです。
「なんだよ、あの技、イナ・バウアーと同じじゃん。つまんねー」
ということには、決してならない。

ひるがえって、これが小説の世界ではどうでしょう。たとえばアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」は、犯人が「ピー」(ご存知かと思いますが、いちおう自粛)であることで有名ですが、これと同じトリックを取り入れた場合、フィギュアや体操のように、
「おお、あざやかなオリエント急行!」
ということには、なかなかなりません。
「なんだよー、オリエント急行と同じじゃん。マネしてんじゃねーよ」
という反応が普通なわけです。同様に、犯人が「ピー」(いちおう自粛)であることで有名なヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」に敬意を表して同じネタを使った場合も、やはり、
「うまいっ! グリーン家が決まった!」
と喝采を浴びることはありません。

推理小説ほど極端でなくとも、たとえば、
「去った女の蒲団に顔を埋めて泣く」
「想い合う男女が、列車の上りと下りで偶然すれ違い、窓から身を乗り出してハンカチを振りながら呼び合う」
「海岸で決め台詞を吐いた後で、すがる女を足蹴にして立ち去る」
などというのは、いかにも絵になりそうなシーンなのですが、それをそのまま応用したところで、
「出たっ! 十八番の『蒲団』! 待ってましたー!」
「いやあ、なんとも優雅な『不如帰』が決まりましたねえ」
「『金色夜叉』キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」
という評価は、ありえません。

常にオリジナルであることを大切にする姿勢は、たしかに大切でしょう。しかし、同様に、過去に創造された素晴らしい技をそのまま取り入れる、という小説のあり方があってもいい。そうすることで、小説の、そして文学の可能性が広がるのではないでしょうか。
もちろん、そのためには、われわれ読者の読み方も、変わらなくてはならないのですが。たとえば、次のような作品があった場合に、
「高難度の技をミスなくまとめてきました! 技術点62.5点!」
というような評価があってもいいと思います。

「来年の今月今夜になったらば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから」と決め台詞を吐いた後、恋人を足蹴にして熊本から上京する主人公が、たまたま列車の中で一緒になったある女と、途中の名古屋で宿屋の同じ部屋で一夜を過ごすことになったのだけど、指一本触れることもできず、「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と冷笑され、肩を落とすのだが、名古屋を出発した後、車内でその女が死体となって発見される! 行きがかり上、にわか探偵となってあちこちを探り回った主人公が最後に得た真実とは、なんと犯人は「ピー」。
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2006年02月17日

赤西くんLOVE

「岡田くん」
「亀梨くん」
「成宮くん」
などと、男子のアイドルは「くん」付けで呼ぶことが多い気がする。「岡田」「亀梨」「成宮」と呼び捨てにするよりも、親しみが湧いて、いい感じである。
ひるがえって、われらが文学方面はどうかというと、かなりの有名どころでさえ、
「三四郎」
「メロス」
「時任謙作」
「間(はざま)貫一」
と、呼び捨てである。「三四郎くん」「メロスくん」と「くん」が付いたものを見たことがない(もちろん、「三四郎さん」「メロスさん」も同様である)。

活字離れが叫ばれる現状をかんがみるに、この、キャラクターを「くん」付けで呼ばない伝統をつくりあげてしまったことは、文学にとって大いなる過ちだったのではないか(アイドルと小説のキャラクターを同列にするな、という方がいるかもしれないが、生身の岡田准一くんと小説の中の小川三四郎は、フツーの人にとっては同じくらい虚構、むしろ三四郎の方がよほどリアルだ)。
今からでも、遅くはない。過ちて改めざることこそ過ちだ。これからは、小説中の男子キャラは、「くん」付けにして、親しんでいこうではないか。その小さな一歩が、将来的には、文学へと若い読者を呼び戻すことにつながるはずだ。

そうしていずれは、
「赤西くんて、チョーいいよねー」
などといいつつ、志賀直哉の「赤西蠣太」について議論する女子中学生、などというのが現れてほしいものである。
(と、これが言いたかっただけです。でもKAT-TUNの赤西くんの名前を知らないと、おもしろくないネタだよね。)

ちなみに、あるいはもしかしたら、夏目漱石の作品の中で『坊っちゃん』の人気が高いのは、「ちゃん」付けだからかもしれなくて、これがもし、「ちゃん」ではなくて、『坊』だけだったら、ここまで広く読まれたか、あやしいものである。
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2006年02月14日

ビアトリクス・ポター資料館

そういえば、ピーターラビットで知られるビアトリクス・ポターの資料館がオープンするそうですね。場所は、埼玉県東松山市の県営こども動物自然公園内。「大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館」。オープンは4月2日です。ポターの名を冠した世界初の資料館なのだそうです。
なぜ埼玉? なぜ大東文化大? などと、深くは考えないでおきましょう。何しろ埼玉にはジョン・レノン博物館だってあるんだし。
このビアトリクス・ポター資料館では、ポター作品に登場する英国リバプール郊外の「ヒルトップ農場」を再現し、ポターが自費出版した私家版「ピーターラビットのおはなし」など大東文化大が所蔵する約500点を展示するそうです。
が、せっかく、こども動物自然公園なんていうところの中にできるのだから、子供たちが喜ぶようなエンターテインメント要素があってもいい。
たとえば、
「こわいわるいうさぎ射的」
なんていうのは、どうでしょう。
ベンチの上に座ってニンジンをかじっている「こわいわるいうさぎ」を、ライフルでズドン!
うまく当たれば、ヒゲとニンジンとふさふさのしっぽだけ残して、こわいわるいうさぎは逃げ去ります。子供たちはピーターラビットの世界を追体験できることでしょう。
で、当たり所が悪いと、
「ぶしゃー」
などと、こわいわるいうさぎの脳漿が飛び散ったりして、けっこう酸鼻。
いくらこわいわるいうさぎだからといっても、みだりに殺したりするのはよくないことなんだな、と子供たちは命の尊さを実感できて、いいと思います。

あ、そういえば、以前に書いた「ピーターラビット・カフェ」は、今どうなってるんでしょうね。
「2ひきのわるいねずみのテリーヌ」
のような、ファン感涙のメニューは実現したのでしょうか‥‥。
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2006年02月08日

高等遊民ソーセキファイブ 第2回

《前回のあらすじ》
何やら詳細はよくわからぬままに、親譲りの無鉄砲が災いして、新たに結成される戦隊に入隊してしまった赤井ボチ也ことボッチャンレッド。下女の清に見送られ、勇んで本部にやって来たものの、まだ他のメンバーは到着していない。なぜだ。また早まったことをやっちゃったのか、オレ。焦るボチ也。だがその頃、残る4人のメンバーも、さまざまなトラブルに見舞われつつも、続々と集結しつつあるのだった‥‥。

《第2回 サンシローブルー、運命の一夜!》

資産家の息子で、とくに職に就くこともなくぶらぶらしていた青川三四郎は、ある日、新たに結成される正義の戦隊のメンバーとして選ばれる。不安を抱えつつ、故郷・熊本を後にした三四郎。その旅の途中、新幹線の隣に乗り合わせた美女と、ひょんなことから同じホテルの一室で、一夜を過ごすことになる。
だが、そこはウブで優柔不断な三四郎、展転反側したあげく、女には指一本すら触れることのないまま、朝を迎える。結局、名前も聞かずじまいだった女が別れ際に漏らしたのは、
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」
という、笑みを含んだひと言。三四郎はしょぼんとしつつ、ボッチャンレッドの待つ本部へと赴くのだった。

ところで、その美女とは、実は悪の組織の女幹部、死の女教師カタイヤのかりそめの姿であった。カタイヤは、敵の力量をはかるべく、ひそかに一般人になりすまし、三四郎に近づいたのだ。
「あんなのが敵なの? たいしたことないわね」
三四郎が去った後、口元に酷薄な笑みを浮かべるカタイヤ。しかし、彼女がこれまで接してきた男に、三四郎ほどウブな男はいなかった。あざけりとともに、われしらず、かすかな愛おしさのようなものを感じてしまうカタイヤ。その小さな気持ちの芽生えが、やがては彼女自身の、そして青川三四郎ことサンシローブルーの運命をも大きく動かしていくことを、知るよしもなかった‥‥。 《つづく》

《次回予告》
ソーセキファイブ、三人目のメンバーであるワガハイワイエローは、いきつけのカレー店「猫屋」でいつものようにカツカレー大盛りを注文した。だが、出てきたカレーには、なんと‥‥!
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2006年02月06日

文芸戦隊

スーパー戦隊シリーズの「魔法戦隊マジレンジャー」がこんどの日曜日で終了し、次は「轟轟戦隊ボウケンジャー」だそうである。マジレンジャーの名前を聞いたときには、「科学戦隊ゴレンジャー」から始まったというのに、おいおい、言うに事欠いて「魔法」かよ、と思ったものであるが、このシリーズも電子やら恐竜やら忍者やらクルマやら警察やら、そろそろネタ切れなんではないか。
さぞかし頭を悩ませているに違いない制作者の皆さんに、ここでひとつ提言をしたい。ここはひとつ「文学」をテーマにしてはどうだろうか。

「高等遊民ソーセキファイブ」
資産はあるけど仕事がない若者5人が集まって、悪の組織シゼンシュギロンと戦うぞ!
メンバーは、
・ボッチャンレッド(熱血漢。無鉄砲)
・サンシローブルー(優柔不断)
・ワガハイワイエロー(デブでカレー好き)
・ユメジューヤパープル(錯乱気味)
・ココロピンク(紅一点。途中で、悪の組織の幹部と通じて、裏切る)
・クサマクラグリーン(裏切ったココロピンクに代わって参加。でも最後まで馴染めないまま終わる)

「理想戦隊シラカバンジャー」
自由と個人を信じる若人5人が、悪の戦争国家ノギーと戦うぞ!
・ムシャレッド(熱血漢)
・アリシマブルー(途中で悪の組織の女幹部と情死。代わって弟のイクマがアリシマブルーになるが、力不足)
・ヤナギグリーン(手先が器用)
・サトミイエロー(憎めないやつ)
・シガブラック(実は悪の大幹部だったことが判明)

そのほか、俳句戦隊ゴーシチファイブとか明治戦隊ローマンジャーとか古今戦隊ワカレンジャーとか悲しき戦隊タクボクファイブとか露悪戦隊シゼンジャーとか、この路線でいくらでも戦隊がつくれそうである。玩具メーカーばかりか、教育関係者からもバックアップが得られそうで、いいような気がするのだけど、どうか。
posted by 清太郎 at 00:00| 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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